研究課題/領域番号 |
19K10176
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
唐木田 丈夫 鶴見大学, 歯学部, 講師 (40367305)
|
研究分担者 |
山越 康雄 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20182470)
山本 竜司 鶴見大学, 歯学部, 講師 (20410053)
斉藤 まり 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60739332)
大熊 理紗子 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50804887)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 破骨細胞 / TGF-β / 骨吸収 / カップリング |
研究実績の概要 |
生体内では破骨細胞の骨吸収により古い骨を溶解・除去し、その跡に骨芽細胞の骨形成によって新しい骨を作るというリモデリングが行われている。正常な骨量を維持するためには、骨吸収と骨形成のバランスを保つカップリング機構が重要であり、それを調整する様々なカップリング因子が明らかにされつつある。本研究では骨基質中に大量に蓄えられているTGF-βに注目し、骨のカップリング機構にどのような貢献をしているか明らかにしようとしている。TGF-βは骨基質中では不活性な潜在型(LTGF-β)で蓄えられ、骨吸収の際に破骨細胞から分泌される酸によって骨基質の溶解と共に放出されて活性化される。我々はLTGF-βを表面に共有結合させた培養プレートに、ヒドロキシアパタイト(HA)をコーティングした模擬的な骨基質上で破骨細胞を培養することでin vitroの骨吸収モデルを作製し、骨基質中のTGF-βが破骨細胞自身にどのような働きをしているか検討することにした。 本年度は細胞培養法を用いた骨吸収実験モデルの作製とその方法の妥当性の確認を行い、骨吸収によって放出・活性化されたTGF-βが破骨細胞の骨吸収活性を増強させる結果を得た。次のメカニズムを解明するため、定量的RT-PCR法で成熟破骨細胞の破骨細胞分化関連遺伝子、骨吸収関連遺伝子、骨芽細胞分化誘導遺伝子の発現を観察した。分化と共に誘導される遺伝子の中で破骨細胞分化マスター遺伝子のNFATc1、RANKL受容体のRANK、骨芽細胞分化を誘導するWnt1などがTGF-βによって促進され、骨基質から放出されたTGF-βは成熟した破骨細胞にも有効であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TGF-βは未成熟の破骨細胞に働き、RANKLによる分化誘導を促進することが知られているが、成熟した破骨細胞にどのような効果があるかは明らかではない。骨基質から放出・活性化されたTGF-βの最も近い標的は骨吸収を行った破骨細胞自身であると考え、成熟破骨細胞に対するTGF-βの作用を検討した。マクロファージ由来のRAW264細胞はRANKL添加から3日で破骨細胞に分化することから、その期間を分化前期、中期、後期に分けてTGF-βを添加し、定量的RT-PCR法を用いて破骨細胞分化関連遺伝子、骨吸収関連遺伝子、骨芽細胞分化誘導遺伝子の発現を観察した。RANKLによって誘導されるこれらの遺伝子の大半はTGF-βを前期に添加することで促進されたが、後期に添加しても効果はみられなかった。しかしながら、破骨細胞分化マスター遺伝子のNFATc1、RANKL受容体のRANK、骨芽細胞分化を誘導するWnt1などの遺伝子にはTGF-βの後期の添加でも有効であり、骨基質から放出されるTGF-βの成熟破骨細胞に対する効果が認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下の3点を予定している。①骨基質由来TGF-βの骨吸収促進作用のメカニズムを探るため、波状縁やアクチンリングなどの骨吸収に関連する破骨細胞の形態を観察し、TGF-βの影響を観察する。②骨芽細胞を活性化する破骨細胞由来のサイトカインを測定することで、骨基質由来TGF-βの骨形成に対する間接的な作用を検討し、骨リモデリングにおけるTGF-βの総合的な働きを明らかにする。③実験的骨粗鬆症モデル動物の骨基質内のTGF-β濃度と骨密度を測定することで、骨粗鬆症における骨基質TGF-βの影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍の影響により、予定していた学会がオンラインで行われて旅費が不要になった。また、細胞実験、遺伝子実験に比べてタンパク質の実験がやや遅れていたので、それに使用するはずの抗体試薬の購入が少なかった。次年度使用額は前述の抗体とサイトカイン類の測定キットを購入するために使用する。
|