研究課題/領域番号 |
19K10180
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 太郎 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30302160)
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研究分担者 |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (30431589)
天雲 太一 東北大学, 大学病院, 講師 (80451425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロアントシアニジン / インプラント / オッセオインテグレーション / 骨粗鬆症 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
初年度の研究では、卵巣を摘出し骨粗鬆症を誘発したラットにおいて、プロアントシアニジンを毎日経口投与することで、骨密度の低下を抑制することができ、さらに、インプラントのオッセオインテグレーションの低下も抑制することができることを実証した。そこで、2年度目の研究では、プロアントシアニジンの経口投与が骨代謝に及ぼす影響のメカニズムを解析するために、腸内細菌叢の分析を実施した。 雌性Wistarラットを卵巣摘出群と偽手術群に分け、各手術群においてさらにプロアントシアニジン懸濁液(純水中に懸濁)を毎日経口投与する試験群と純水のみを毎日経口投与する対照群を設定した。プロアントシアニジンの経口投与は胃ゾンデを用いて100 mg/2.5 mL/kgで行った。卵巣摘出の35日後に被験動物の糞便を採取した。さらにサクリファイス後に盲腸を採取した。採取した糞便および盲腸内容物を生理食塩水に懸濁し、市販のDNA抽出・精製キットを用いて細菌のDNAを抽出した。抽出したDNAをリアルタイムPCRにかけ、Firmicutes(F)門の細菌とBacteroidetes(B)門の細菌の構成比を分析した。マウスを用いた先行研究では、卵巣摘出によりF/B比が増加し、プロアントシアニジンの投与によりF/B比の増加を抑制されることで種々の代謝活性に影響を及ぼすことが報告されている。しかしながら、本研究では、糞便も盲腸内容物でもF/B比のバラツキが大きく群間で有意な差が認められなかった。従って、従来考えられていたような腸内細菌叢の構成比率を介した骨代謝へのポジティブな影響というメカニズムを実証することができなかった。今後は、より詳細な検討のために腸内細菌叢の次世代シーケンサーを用いた分析、および腸内細菌叢とは別に回腸におけるパイエル板近傍での免疫応答の変化を分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの感染拡大予防の観点から研究施設への立ち入り制限などが実施されたため、研究に遅れが生じた。しかしながら、初年度に順調に研究をすすることができたため、研究計画全体を通した遅れはわずかである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、プロアントシアニジンの経口投与が卵巣摘出により引き起こされる骨粗鬆症による骨密度の低下を抑制できることが分かってきている。しかしながら、そのメカニズムは不明であり、今後の研究で解明しなければならない。プロアントシアニジンは小腸で吸収されにくいため、大腸まで到達して腸内細菌叢に影響を及ぼすことで間接的に骨代謝に影響を及ぼすという仮説を立てたが2年度目に実施した研究では、その仮説を実証できなかった。今後は生体内の最大の免疫器官として知られる腸管おいて、プロアントシアニジンが及ぼす影響を調べることでメカニズムの解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大防止のために研究機関への立ち入りが制限された時期があり、研究に遅れが生じ、一部未実施の研究で使用する予定であった予算を使用しなった。また、計画していた国内外の出張も中止となったため、計上していた旅費を使用しなかった。次年度は、2年度目の遅れを挽回するための計画を立てて研究を実施し、予算を執行する。また、コロナ禍が収束し次第、国内外の学会における成果発表を積極的に行う。
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