研究実績の概要 |
2年度目の研究では、プロアントシアニジンの経口投与がラットの腸内細菌叢に及ぼす影響を調べたが、マウスを使用した先行研究で報告されているようなFirmicutes/Bacteroidetes比(F/B)の顕著な変化は認められなかった。そこで最終年度は、先行研究の再現性の確認およびプロアントシアニジンが腸内細菌叢に及ぼす影響の詳細な分析を行うために、C57BL/6Jマウスを用いて動物実験を行った。実験では、次の4群を設定した(各群 n = 6):Group 1, 偽手術+通常餌、Group 2, 偽手術+プロアントシアニジン混餌、Group 3, 卵巣摘出術+通常餌、Group 4, 卵巣摘出術+プロアントシアニジン混餌。Group 2およびGroup 4においては、偽手術あるいは卵巣摘出術を行った日から実験終了まで、通常餌に0.2%プロアントシアニジンを添加して混餌投与した。手術当日と、手術の12週後に糞便サンプルを採取してPCRを行い、F/B比を調べた。PCRの結果、本研究では卵巣摘出によりわずかにF/B比が増加し、プロアントシアニジン投与によりF/B比の増加が抑制される傾向を示したが、個体間のばらつきが大きく、群間での有意な差は認められなかった。 一連の研究を通して、プロアントシアニジンの経口投与がラットの卵巣摘出による骨粗鬆症の発症やインプラントのオッセオインテグレーションへの悪影響を抑制することを実証した。従って、これらの有益な効果を応用することで、骨粗鬆症患者のインプラント治療が改善されることが期待できる。しかしながら、作用機序解明には至らなかった。プロアントシアニジンのバイオアベイラビリティは低いことが知られているため、腸内細菌によるプロアントシアニジンの代謝産物を介するような間接的な作用の可能性が高いと考えられる。今後この仮説を検証することが必要となる。
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