研究課題/領域番号 |
19K10186
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
根津 尚史 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (40264056)
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研究分担者 |
遠藤 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70168821)
建部 二三 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (10534448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 温度誘起ぬれ性可逆転移 / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / PNIPAm / 接触角 / top-view法 / 相転移温度精密測定 / 全自動濁度変化測定 |
研究実績の概要 |
温度変化により転移的かつ可逆的にに親水性/疎水性が変化するレジン材料の創成を目指し、①ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)の誘導体を合成すること、②その物性(バルク:機械的強度、表面:親水/疎水性)を評価すること、③このレジンの歯科材料への利用の可能性を探索することを、本研究の目的としている。 初年度は、目的①へのアプローチとして、合成しようとする高分子の親水/疎水転移温度を決定する因子を探り、任意の温度に転移を設定する方策を検討する実験を計画した。濁りの有無の目視による従来の観察方法では、(1) 離散的に温度を変えて平衡化を待ち濁りを判定するため、数℃単位程度の低い精度でしか転移温度を決定できないこと、(2) 目視のため濁りの判定に客観性が欠けること、が問題であった。そこで本研究では、準静的に低速で温度を連続変化させ、継続的に濁度(500 nmの吸光度)を測定する手法で対応することとした。この計測を自動化するシステムの構築を行い、目的どおりの動作を確認できた。具体的には、恒温セルジャケットを有する紫外可視分光光度計(当該年度の予算で導入)に、温度プログラムが可能な精密低温循環恒温槽(現有機器)を接続し、0.1℃/minの低速でセル部を加熱または冷却し、ジャケット温度を熱電対温度計で継時的に記録しながら、濁度の指標として500 nmでの吸光度を継時的に測定した。取得された温度~時間データおよび濁度~時間データから濁度~時間プロットを行い、この図から透明性が急変する温度を0.1℃単位で読み取り、相転移温度とした。 目的②へのアプローチの一つとしては、従来と根本的に異なる接触角測定法(上面観察(top-view)法)による計測システムを考案し、実測結果を従来法と比較し、top-view法の妥当性と優位性を確認した。計測~解析システムの煩雑さの改善が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子合成の設計に必要なPNIPAmの相転移条件を検索する実験を計画していたが、全自動精密相転移温度計測システムの構築に時間を要し、合成を開始できていない点で予定より遅れている。 一方、ぬれ性を評価する接触角の測定法として、従来法と根本的に異なる上面観察法(top-view法)を独自に構築し、実測結果の従来法との比較から新方法の妥当性、優位性が確認できたことは予想外の成果であった。 これらを総合的にみて、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.全自動精密相転移計測システムが概ね完成したことから、種々のNIPAm(またはPNIPAm)/コモノマー組成物について相転移温度測定を進め、ぬれ/非ぬれ転移温度の任意設定を目指したPNIPAm誘導体高分子の合成の組成条件を絞り込む。 2.その組成条件での合成を実施して高分子体を得る。合成に最低限必要な試薬は初年度の経費で購入済みである。試験的な合成に必要な器具類は現有物を利用し、合成の効率化に必要な器具類(消耗品)を2年次の経費で購入する。 3.試作高分子について、初年度に立案・構築したtop-view法接触角計測システムを利用してぬれ性およびその温度依存性を評価する実験を行う。並行して、この計測法の更なる自動化の改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に高分子合成まで計画が進まなかったため、このレジン材料を用いた研究分担者の業務である (1) 材料の力学評価および (2) 材料の生体安全性の遂行を実現できなかった。このため、これらに計上していた予算を計画通りに執行できず、次年度に繰り越すこととなった。 遅れていた相転移温度自動精密計測システムの完成で、目的の(任意の)相転移温度を材料に付与するための材料組成検討が順調に進む見通しが立ったので、2年次に材料合成を実施し、その評価に繰り越した予算を充当する計画である。
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