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2020 年度 実施状況報告書

新規先端材料開発を目的とした遺伝子改変マウスのエナメル質ナノメカニクス解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K10188
研究機関昭和大学

研究代表者

柴田 陽  昭和大学, 歯学部, 教授 (30327936)

研究分担者 山田 篤  昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
荻野 玲奈 (田中玲奈)  昭和大学, 歯学部, 講師 (80585779)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードエナメル質 / ナノインデンテーション / ハイドロキシアパタイト / エナメルタンパク
研究実績の概要

応力ひずみ曲線は材料機械特性の情報量が多く,最も信頼性の高い試験方法である.しかし規格試験である引張・曲げ試験は生体材料や構造材料に用いることが適当でなく,局所をの応力ひずみ特性を直接評価できる新たな試験方法の開発が求められている.微小領域の機械特性試験としてはダイアモンド圧子を用いたナノインデンテーション法が以前から知られている.これは応力ひずみ特性における初期のコンタクトメカニクスである弾性係数を議論することができる一方で,バルク試験における最大強度,破壊抵抗性などの情報を獲得することはできない.球状圧子を用いたナノインデンテーション法では,材料表面への接触直後から応力場を制御しやすい.すなわち接触直後では弾性変形を生じ,荷重上昇に伴い塑性変形を発生する.このため理論上局所の応力ひずみ曲線から降伏点強度を議論することができるようになった.初期接触で弾性変形のみを生じる球状圧子では歯質と修復材料界面での微小機械特性のマッピングが可能になり,これまで困難であった象牙質と歯面処理剤のハイブリッド層を直接評価できる方法を新たに開発することができた.その結果,親水性機能性モノマーを用いた歯面処理では象牙質と修復材料界面の機械特性が著しく低下していることが明らかとなった.この結果に基づき,新たにリン酸エステル系機能性モノマーのみで歯面処理した歯面処理剤の開発に着手することができた.また本研究で用いられる最新装置ではプラスの荷重だけでなく,圧子が材料に接触する際に発生するマイナス荷重から材料表面の凝着力(粘着力)を数値化でき,金属薄膜をもちいたあらたな生体用接着材料の開発にも波及効果が見られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

生体組織に対し,材料レベル(ナノスケール)での応力ひずみ曲線が得られることが証明された.球状圧子では低荷重領域で接触する先端付近の曲率を正確に求めることが難しい.圧子先端数nmの完全な接触が難しく,理論上求められる圧子先端形状の曲率は実際よりも大きくなることが多い.この点,ヘルツの接触理論を応用した接触点補正方法を開発し,表面ナノレベルでの粗さを数学的に補正することができるようになった.このため,圧子先端のみを用いた構造材料(生体材料)の機械特性のマッピングが可能になり,これまで不可能であった生体組織と人工材料界面特性を数値化することができる様になった.加えて,一連の研究で用いた装置の高精度を利用し,材料表面の凝着力を測定することによって新規生体材料の開発への波及効果が見られた.これらについては国際誌への論文投稿を行い,既に採択されている.

今後の研究の推進方策

遺伝子改変マウスから採取したエナメル質の力学的特性を評価し,間質タンパクであるアメロブラスチン,エナメリンの力学的機能を検討する.本研究計画ではさらに球状圧子を用いてエナメル質の基本強度をナノレベルで議論するため,圧子先端形状校正を数学的に補正できるオリジナルソフトウェアを共同開発する.一連の研究で開発された新たな微小機械特性試験は新規生体材料の開発への波及効果が大きく,今後も継続する.また近年ではYAGレーザー照射した歯質の物理・化学特性変化が注目されており,これらの微小機械特性についても検討していく計画がある.

次年度使用額が生じた理由

未だ収束の見えないコロナ禍の中,世界的大規模なロックダウンが生じ,予定していた学会出張のキャンセルにより次年度使用額が生じた.本年度は生体材料分野の国際学会での発表や,関連するトップレベルの研究者と頻繁な議論が重要であることを踏まえ,ワクチン接種の普及とともに国際活動の再開が予想されるため,研究代表者・分担者の出張旅費を申請する予定である.トライボインデンター(ナノインデンテーション装置)のテキストデータから直接応力ひずみ曲線を作成できるソフトウェアの開発を依頼する.本ソフトウェアは準静的試験および動的試験のデータ解析が可能であり,ひずみ依存特性の強い複合材料や生体材料の機械特性試験に広く応用されることが期待できる.微小領域の機械的特性を分析するナノインデンテーション法では,消耗品としてダイアモンド圧子(インデンターチップ)が必要である.通法に用いる三角錐形状のバーコビッチ圧子に加え,本研究ではコニカルタイプ(球状)のダイアモンド圧子を用いることにより,マイクロスケール以下の応力ひずみ曲線を計測できる.硬組織は階層構造を有する天然の生体材料であり,材質的評価には構造に物性値を左右されない材料レベル,すなわちマイクロスケール以下の計測が重要と考えられる.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Neural crest-derived cells in nasal conchae of adult mice contribute to bone regeneration2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Hiroshi、Suzawa Tetsuo、Shibata Yo、Takahashi Masahiro、Kawai Ryota、Takami Masamichi、Maki Koutaro、Kamijo Ryutaro
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 554 ページ: 173~178

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2021.03.079

    • 査読あり
  • [雑誌論文] High-resolution mechanical mapping of the adhesive?dentin interface: The effect of co-monomers in 10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate2021

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Shinpei、Zhou Jun、Wurihan、Shimomura Naofumi、Kataoka Yu、Watanabe Chie、Shibata Yo、Funatsu Takahiro、Gao Ping、Miyazaki Takashi
    • 雑誌名

      Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials

      巻: 117 ページ: 104389~104389

    • DOI

      10.1016/j.jmbbm.2021.104389

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Titanium as an Instant Adhesive for Biological Soft Tissue2020

    • 著者名/発表者名
      Okada Masahiro、Hara Emilio Satoshi、Yabe Atsushi、Okada Kei、Shibata Yo、Torii Yasuhiro、Nakano Takayoshi、Matsumoto Takuya
    • 雑誌名

      Advanced Materials Interfaces

      巻: 7 ページ: 1902089~1902089

    • DOI

      10.1002/admi.201902089

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Train of thought on implantable biomaterials: Titanium versus zirconia2020

    • 著者名/発表者名
      Shibata Yo
    • 雑誌名

      Journal of Prosthodontic Research

      巻: 64 ページ: 4-4

    • DOI

      10.1016/S1883-1958(20)30086-4

    • 査読あり
  • [学会発表] 外套象牙質の硬さおよび弾性率2020

    • 著者名/発表者名
      井上 利志子, 齊藤 誠, 西村 文夫, 宮崎 隆, 柴田 陽
    • 学会等名
      日本歯科理工学会
  • [学会発表] 各種ケイ酸リチウムガラスCAD/CAMブロックに対する各種レジンセメントのせん断接着強さ2020

    • 著者名/発表者名
      高橋 慎平, 堀田 康弘, 佐々木 香, 佐々木 正和, 柴田 陽
    • 学会等名
      日本歯科理工学会
  • [備考] Researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/yo-shibata

  • [備考] Google Scholar

    • URL

      https://scholar.google.com/citations?user=IZMDGX0AAAAJ&hl=ja&oi=ao

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公開日: 2021-12-27  

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