研究課題/領域番号 |
19K10192
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
李 憲起 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (60350831)
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研究分担者 |
各務 秀明 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (80242866)
溝口 利英 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (90329475)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スフェロイド / 体性幹細胞 / stemness / 幹細胞マーカー / 接着因子 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
細胞を凝集させることによって得られるスフェロイド(spheroid)の構成細胞は、高い幹細胞性を有するとともに生体に近い細胞-細胞間、細胞-細胞外基質間の相互作用を再現することが可能であるため、再生医療のみならず、新たな医薬品開発のためのツールとしての応用も期待されている。その一方で、スフェロイドが形成される分子機構や、スフェロイドを形成する細胞がなぜ幹細胞性を獲得できるかに関しては未解明な点が多い。本研究では、スフェロイド形成初期から変化する遺伝子、特に細胞接着に関与するインテグリンとその細胞内シグナルを検索することで、脱分化による幹細胞性獲得のメカニズムの解明を目的とする。 自発的スフェロイド形成過程における脱分化と幹細胞性獲得機構の解明のため、われわれはスフェロイド形成過程で変化する遺伝子をターゲットとして解析を行っている。自発的スフェロイド形成では、同じシャーレ上の細胞集団の一部がスフェロイドを形成し、それ以外の細胞は接着した状態でプレート上にしばらく残存する。そこで、最初のアプローチとして、自発的スフェロイドを形成する細胞と、形成せずに接着状態で残存する細胞における遺伝子発現の変化について、RNA-seqを用いて網羅的解析を行った。スフェロイドを形成24時間後の細胞と接着細胞のRNAとを比較したところ、スフェロイドで3倍以上発現増加する遺伝子は1690あり、3分の1以下に減少する遺伝子は1460検出された。発現が上昇する遺伝子群の中で、4つの増殖因子と1つの幹細胞マーカーを選択し、現在それらの機能について解析を行っている。一方、当初推定された細胞接着に直接関与する遺伝子群の変化は少なく、接着因子がスフェロイドの幹細胞性に関与する証左は得られていない。そこで、現在は接着性因子から幹細胞マーカーへのシグナル経路の一つであるWntシグナルに対象を絞って検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、自発的スフェロイドの幹細胞性の獲得に影響する可能性がある増殖因子や幹細胞マーカー、細胞内シグナルを抽出できたことから、おおむね順調に進行しているといえる。また、スフェロイド形成過程において、幹細胞のstemnessを制御する鍵となるシグナル経路については、Wntシグナル経路の解析から、スフェロイド形成における幹細胞性制御メカニズムの一部を解明できる可能性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度で明らかになったスフェロイド形成過程における幹細胞のstemness制御遺伝子の機能を明らかにする。また、変動する遺伝子のレベルについて、定量的RT-PCRで確認を行う。さらに、幹細胞性の維持に働く重要な細胞内シグナル系が明らかになれば、阻害実験にてその影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内で効率的な実験を行ったが、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)への対応で業者の来学が制限されたことなどにより、一部の実験に遅延が生じたため、次年度に使用する研究費が生じた。したがって、2021年度に充填することにより計画とおり、効率的に研究が遂行できると考えられる。
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