研究課題/領域番号 |
19K10196
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
西田 尚敬 大阪歯科大学, 歯学部, 講師(非常勤) (70448116)
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研究分担者 |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
本田 義知 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (90547259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化チタン / ナノチューブ / アパタイト / 骨形成 |
研究実績の概要 |
アクリル系骨セメントで用いられているPMMAは骨と直接結合することができないため、優れた生体活性を示す酸化チタンと組み合わせた長期間安定した生体活性骨セメントが作製されている。さらなる骨との結合力向上が望まれており、本研究では、チタニアナノチューブ(TNT)自体の生体活性能を向上させるため、TNTとHApの複合化を検討した。 溶液化学法によりTNTを作製し、SBFを用いた生体模倣環境下でTNTとApを複合化した。TNT粒子を1.5 SBF中で、紫外光を照射しながら室温で5h攪拌還流した後、紫外光照射を止め37 ℃で3日間攪拌還流し、吸引濾過にてTNTを回収した。 XRD回折の結果、SBFに浸漬攪拌しただけのTNTからはApのピークは検出されなかったが、紫外線照射処理をおこなったTNTからはナノクリスタルApのピークが検出された。微細構造観察ではTNTに沿ったシート状析出物が観察され、このシート状析出物はEDXの面分析によりCaとPの分布とTiの検出領域が一致しており、Apであることがわかった。Ca/P比は、HApの理論値1.67に比べ低く低結晶であり、また、ACPが混在しているものと思われる。XPS測定の結果、O1Sピークから、SBF中における紫外線照射後のTNT表面ではブリッジOH基およびターミナルOH基が多量に形成されていることが明らかとなった。TNTから生成される・OHがSBFに含まれる(CH2OH)3CNH2を分解あるいは溶液中のOH-と反応するため、酸素欠損したTi3+が溶液中で酸化されにくくなった結果、水分子が表面に解離吸着しやすくなり新たな水酸基が形成され、Apが析出したと考えられる。本実験では、SBF中でのTNTへの光照射は、表面にTi3+を生成することで多量の水酸基を形成し、アパタイトの核形成を促進することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた研究を遂行するにあたり、学会参加などで無機材料化学、ナノ材料科学分野の研究者と意見交換等を積極的に行い、効率的に実験遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験によりTNT表面でのアパタイト析出条件が明らかとなりつつある。次の展開として、実験条件を変化させることで析出するアパタイトの形態制御条件を明確にする予定である。また、熱処理をおこない結晶性を高めたTNT表面でのアパタイト析出条件も明らかとしていく予定である。アパタイトが析出しなければ、官能基をTNT表面に修飾する方法ではなく骨形成に関与するイオンをドープする方法もおこなう予定である。そして、In-Vitroでの骨形成評価をおこなうにあたりバイオマテリアルが専門の研究分担者とも積極的に連絡を取り合い、研究の効率化を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者および分担研究者は、可能な限り消耗品の節約に努め、また、評価等に既存の装置だけでなく他研究室の装置を無償で使用できたことから次年度使用額が生じた。次年度に、消耗品の補充および精密評価のための最新装置使用料に使用する予定である。
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