研究課題
高齢者において,口腔内の状態と栄養状態との間に関連がみられることが,これまで数多く報告されている。我々も,そこで今回は,70歳80歳の地域高齢者を対象とした縦断研究において,咬合力と,6年後の低栄養との関連について検討を行った。対象者は70歳80歳の高齢者1459名とした。最大咬合力の測定にはデンタルプレスケール50H,Rタイプ (ジーシー社,東京,日本) を用いた.栄養状態の評価としては,スクリーニングの指標として一般的に使用されているBMIや血清アルブミン値,上腕周囲径,下腿周囲径を用いた.BMIが21.5未満であった者,血清アルブミン値が3.8g/dL未満であった者,上腕周囲径が21cm未満の者,下腿周囲径が31cm未満の者を低栄養と定義した。ベースライン時に低栄養と定義された人は分析から除外した。咬合力と栄養状態との関連を検討するために,それぞれの栄養状態についてモデルを作成し、それぞれの栄養状態を従属変数,咬合力,歯数を独立変数とし,性別,年齢,経済状況,教育年数,糖尿病の罹患状況,脳卒中ならびに悪性腫瘍の既往,服用薬剤数,認知機能,うつ状態,握力,手段的日常生活動作を調整変数とした一般化推定方程式(ロジスティック回帰モデル)による分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。一般化推定方程式の結果,他の全ての変数を調整した上でも,最大咬合力 (オッズ比=0.89, p=0.004) と経過年数 (オッズ比=1.48,p<0.001) は,BMIの低下と有意な関連を示した。一方,最大咬合力は,アルブミンの低下や上腕周囲径の低下,下腿周囲径の低下と有意な関連を示さなかった。
2: おおむね順調に進展している
十分な参加者数が得られ,栄養状態と口腔機能のデータ収集,整理,栄養学の専門家と共同で行う分析も順調に進んでいる.
次年度は88~90歳のベースラインより9年後の追跡データの収集の予定である.
参加者が高齢となってきており,予定より若干参加者が少なく少し余りが出てしまった。次年度の謝金等にあてる予定である。
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