研究実績の概要 |
【目的】中枢性感作は,慢性疼痛において重要な概念であり,temporal summation of second pain(以下,TSSP)が有用な指標とされている.しかし,TSSPの刺激条件は十分に検討されていないため,本研究ではその確立を目的とした. 【方法】被験者として,primary myofascial orofacial painを有する患者(n = 39)および,疼痛の既往のない健常者(n = 30)を選択した.健常者におけるTSSP発現様相,および,健常者とprimary myofascial orofacial painを有する患者とのTSSPの差異を検討した.コンピュータ制御定量的温度感覚検査機器を用いて,非利き手側母指球に温熱刺激を与え,疼痛閾値(PT ℃)を測定した後,PT ℃,PT+1 ℃,PT+2 ℃の刺激を2秒間隔で10回連続行った.連続記録した主観的疼痛強度から,TSSPのパラメータ(TSSP magnitude, TSSP frequency, TSSP slope)を算出し,繰り返し刺激による主観的疼痛強度への経時的影響を一般化線形混合効果モデルにより解析した. 【結果】健常者において,PT ℃で主観的疼痛強度は有意に減少したが,PT+2 ℃では主観的疼痛強度は有意に増加した.TSSPのパラメータについてprimary myofascial orofacial painを有する患者と健常者を比較すると,PT ℃におけるTSSP magnitudeは患者群で有意に高く(P < .02),PT+2 ℃におけるTSSP slopeは患者群で有意に長かった(P < .05). 【結論】患者固有の疼痛閾値を基にTSSPの刺激強度を設定し,TSSPのパラメータの多面的な評価をすることが中枢性感作を調べる上で有用であることが示唆された.
|