研究課題/領域番号 |
19K10209
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田上 直美 長崎大学, 病院(歯学系), 准教授 (70231660)
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研究分担者 |
鮎瀬 てるみ 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (00284703)
鮎瀬 卓郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (20222705)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗菌性 / セメント / 銀微粒子 / 銅微粒子 |
研究実績の概要 |
平成31年度(令和元年度)では、セメント材料に簡便に抗菌性を付与することを目的に、無機系抗菌材の一種であり金属材料の中でも抗菌性の高い銀および銅微粒子をセメントへ添加したものについて、齲蝕原性細菌であるStreptococcus mutans に対する抗菌効果が得られたかどうかを微生物学的手法にて検討した。 銀微粒子(粒径4-7 μm)と銅微粒子(粒径5 μm)、供試菌としてS. mutans MT8148株を用いた。①対照群としてBrain Heart Infusion(BHI)液体培地を、実験群として両微粒子を各々添加したBHI液体培地を用意し、これらの培地に供試菌を接種後、菌液の濁度を波長600 nmで計測し菌の増殖曲線を描画した。また、②対照群にMMA系レジンセメント(スーパーボンド)ディスク、実験群に両微粒子を各々1.5wt%添加した同セメントディスクを作製し、JIS L1902ハロー法を用いて生育阻止帯の幅を測定した。 その結果、①銀、銅のいずれにおいても50 mM及び500 mMの添加で菌の増殖は抑制され、添加量の増加に伴い菌の増殖抑制も強化された。特に、銅添加において菌の増殖抑制は顕著であった。②培地上に直接セメントディスクを留置した場合、銅 5wt%含有のディスク周囲に幅約1 mmのハローが観察された。その他の条件では観察されなかった。培地上に直径8 mmのペーパーディスクを留置し、その上にセメントディスクを配置した場合、全てのペーパーディスク周囲にハローが観察された。最も幅広く明瞭に観察されたのは銅 5wt%のペーパーディスク周囲であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度(令和元年度)では、当初の予定通り研究課題に対する生物学的アプローチを進めており、抗菌性を有するセメントシステムはin vitroにおいては確認できた。次年度は、結果を論文化する一方で、臨床研究にも着手できる予定であり、おおむね順調に研究は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、セメント材料に簡便に抗菌性を付与する研究を更に進めると同時に既製永久歯金属冠を用いた固定性補綴法の臨床成績分析 (前向きコホート)に着手する。 銀もしくは銅微粒子を0wt%、 1wt%含有させたMMA系レジンセメントを使用し、50 mm×50 mmの試験片を滅菌シャーレに入れた後、1.0×105個~4.0×105個の試験菌を含む菌液0.4 mLを試料の中央部に滴下し、40 mm×40 mmに切断したポリエチレンフィルムで被覆、このシャーレを相対湿度90%以上で24時間培養後単位面積あたりの生菌数を測定する。 臨床評価では、従来レジン充填や鋳造冠などで修復してきたスペシャルケア要患者の広範囲齲蝕歯に対し、既製永久歯冠を装着し経過を観察する前向きコホート研究を実施、永久歯冠はパーマクラウンを使用、長崎大学病院にて永久歯冠を装着する患者を対象とする。患者背景として、年齢、性別、疾患名、歯式、咬合様式(アイヒナー分類)についての情報を収集、装着時にベースラインとして冠辺縁の適合、冠マージンの位置、冠隣接面のコンタクト、プラーク(OHI-S)、歯肉溝からの出血の5項目について評価を行い、1年後を目安に再評価を行う。後観察期間では、脱離、二次カリエス、咬合面穿孔の3項目の有無についても評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新たな手法での統計解析のため、新たなPCソフトが必要となり、令和2年度に購入するため。 使用計画:令和2年度に新たなPCソフトを購入するための資金として充当する。その他の科学研究費については、令和2年度の研究計画の通りに使用予定である。
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