研究課題/領域番号 |
19K10214
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
舞田 健夫 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40229282)
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研究分担者 |
會田 英紀 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (10301011)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯学 / 生体材料 / インプラント / 骨吸収抑制薬 / 光機能化 |
研究実績の概要 |
ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)は骨吸収抑制作用を有することから、骨粗鬆症を始めとする骨吸収亢進を呈する様々な骨代謝疾患における治療薬として広く用いられている。しかしながら、骨吸収抑制薬は顎骨壊死を発現させるリスクが高いことから、インプラント治療を行う上でのリスクファクターと考えられており、治療法の選択を制約するものとなっている。本研究の目的は、全身の骨代謝能が低下したラットモデルにおけるインプラントの光機能化処理の有効性を調べることである。 令和元年度の研究成果より、BP製剤とプレドニゾロンを併用投与したラットとコントロール群のラットの押し込み試験において、最大押し込み荷重は、統計的有意差は認められなかったため、令和2年度は、BP製剤投与と同様に全身の骨代謝能が低下した動物モデルである骨粗鬆症モデルラットを用いて実験を行った。 ① 3か月間生理食塩水を皮下注射したラットに酸処理インプラントを埋入(Con-NA群)、② 3か月間リセドロネートとプレドニゾロンを皮下注射したラットに酸処理インプラントを埋入(BP-NA群)、③ 3か月間リセドロネートとプレドニゾロンを皮下注射したラットに光機能化処理を行った酸処理インプラントを埋入(BP-PA群)の3群に対して埋入2、4週後に押し込み試験を行い、最大押し込み荷重を測定することにより骨-インプラント結合強度を評価した。 埋入後2週の押し込み試験において、Con-NA群、BP-NA群、BP-PA群の最大押し込み荷重(N)はそれぞれ54.3±8.8、52.4±6.5、65.3.±3.3であり、BP製剤投与ラットでは、光機能化処理によって最大押し込み荷重が1.24倍に有意に増大していた(n=7、p<0.05)。また、押し込み試験後の光機能化群のインプラント表面には対照群と比較して多くの骨様組織の付着が認められた。 以上の研究成果より、BP製剤を投与したラットに対して光機能化処理が有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまでラット大腿骨モデルにおいて様々な研究を行ってきた。さらに本研究課題の予備実験として、BP製剤の単独投与ラットモデルにおいて、光機能化処理が有効であることを確認していた。令和元年度は、これまでの研究成果をふまえてBP製剤とプレドニゾロンを併用投与したラットを用いて実験を行い、押し込み試験、SEM画像の観察、EDX分析の結果から、BP製剤単独投与と同様に光機能化処理の有効性を示す結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究成果より、BP製剤とプレドニゾロンを併用投与したラットにおいても、BP製剤単独投与と同様に光機能化処理の効果があることが示唆された。しかし、押し込み試験において、BP-NA群の平均値はCon-NA群の値に比べて低値を示したものの、統計的有意差は認められなかった。そこで今後は、使用薬剤の投与量、投与間隔、投与期間を再度検討する予定である。さらに、バイオメカニカル試験に加えて、マイクロCT撮影による骨微細構造の解析や非脱灰研磨標本の組織計量学的評価を行う予定である。また、本研究の最終目標は、全身の骨代謝能が低下した動物モデルに対して光機能化テクノロジーを応用することが有効であるかどうかを検証することであるため、期待しているデータが得られない場合は、老齢ラットモデルあるいは骨粗鬆症ラットモデルの使用等を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行率は、91.6%に達しており概ね計画通りに研究費を執行できたと考えている。繰越額はわずかであることから次年度の物品購入費として使用する予定である。
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