ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)は骨吸収抑制作用を有することから、骨粗鬆症を始めとする骨吸収亢進を呈する様々な骨代謝疾患における治療薬として広く用いられている。しかしながら、骨吸収抑制薬は顎骨壊死を発現させるリスクが高いことから、インプラント治療を行う上でのリスクファクターと考えられており、治療法の選択を制約するものとなっている。本研究の目的は、全身の骨代謝能が低下したラットモデルにおけるインプラントの光機能化処理の有効性を調べることである。 令和3年度は、BP製剤投与と同様に全身の骨代謝能が低下した動物モデルである骨粗鬆症モデルラットを用いて実験を行った。① 8 週齢で卵巣摘出をした 14 週齢雌性ラットに酸処理インプラントを埋入(OVX-NA群)、② 8 週齢で卵巣摘出をした 14 週齢雌性ラットに光機能化処理を行った酸処理インプラントを埋入(OVX-PA群)、③ 卵巣摘出をしていない 14 週齢雌性ラットに酸処理インプラントを埋入(Con-NA群)の3群に対して埋入4週後に押し込み試験、マイクロCT撮影を行い、最大押し込み荷重とインプラント周囲の骨形成量を測定することにより骨-インプラント結合強度を評価した。 埋入後4週の押し込み試験において、OVX-NA 群が Con-NA 群の 0.68 倍の値を示し、OVX-PA 群が OVX-NA 群の 1.53 倍の値を示した(n=6,p<0.05)。骨-インプラント接触率は、Con-NA 群が70.92±4.64%、OVX-NA 群が60.74±3.44%、OVX-PA 群が69.86±5.06%を示した(n=4,p<0.05)。 以上の研究成果より、卵巣摘出ラットにおいて光機能化処理が有効である可能性が示唆された。
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