研究実績の概要 |
最終年度には、健常者や高齢者の摂食嚥下機能の中枢制御機構ならびに嚥下機能向上に結びつく下記の成果を得た。1. 舌運動と脳磁場反応との脳反応―運動コヒーレンス解析(CKC)を試みた。AI(機械学習)技術を駆使しビデオカメラで撮像した舌運動をキャプチャーモーション解析し、脳反応―舌運動コヒーレンスの解析を行った。CKCは両側半球に認められ、電流源は舌感覚運動野に同定された(Maezawa et al., 2022a)。本手法は、電極などを口腔内に設置する必要がなく、誤嚥や感染のリスクがないという利点を有する。2. 高齢者において歌唱トレーニングが口腔咽頭筋の筋力低下を防ぎ、嚥下機能維持に有効であるという仮説を立て、歌唱経験者55人と非歌唱経験者141人を対象に反復唾液嚥下テストによる嚥下機能評価を行った。歌唱経験者では非歌唱経験者に比べて反復唾液嚥下回数が有意に上昇しており、歌唱トレーニングの嚥下機能維持への可能性が示唆された(Yagi et al., 2022)。3. 舌運動障害の患者における新規脳刺激法を用いたアプローチを報告した(Maezawa et al, 2022b)。 さらに研究期間全体として、3. AI(機械学習)を用いたキャプチャーモーション解析により、咽頭部の動きを自動解析し嚥下を評価する手法を確立した(Nakamura et al., 2021)。さらに、両側舌運動野を同時刺激する手法を確立し、舌運動野の可塑性変化ならびに舌運動機能向上を誘導することに成功した(Maezawa et al, 2020) 。4. 咀嚼運動と歩行運動との異なる生体リズム運動の引き込み現象に関する報告を行った(Maezawa et al, 2020)。今後、我々が開発した嚥下機能評価法や機械学習を用いた口腔運動時脳機能解析法を有機的に融合し、新規嚥下機能再建法の確立に臨床応用する。
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