研究課題/領域番号 |
19K10219
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂口 究 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (90312371)
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研究分担者 |
横山 敦郎 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20210627)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 座位姿勢 / 足底接地の有無 / 咀嚼運動 / 咀嚼能力 / 頭部動揺 / 体幹動揺 |
研究実績の概要 |
顎口腔機能と姿勢制御の相互連関性を解明するうえで,「顎口腔機能が姿勢に及ぼす影響」のみならず,「姿勢の変化が顎口腔機能に及ぼす影響」についても検討することはきわめて有意義である.そこで,初年度は,ヒトが咀嚼を行う一般的な姿勢である座位において,咀嚼が姿勢制御に影響を及ぼし,姿勢の安定性を高める可能性があることを明らかにした.昨年度は,姿勢の変化,具体的には,足底接地の座位姿勢における咀嚼時には,足底非接地の座位姿勢時と比較して,姿勢の安定化が図られるとともに,高い咀嚼能力を発揮することを明らかにした. そこで本年度は,座位姿勢における足底接地の有無が,どうして咀嚼能力に影響を及ぼすのかを明らかにするために,足底接地の有無が咀嚼運動と咀嚼能力に及ぼす影響に関する検討を行った. 足底接地の座位姿勢(両足底が床面に全面接地した端座位)と足底非接地の座位姿勢(両足底が床面から浮いた端座位)の2つの姿勢の条件下において,グミ咀嚼時における頭部動揺,体幹動揺(座圧荷重分布),咀嚼運動の経路とリズム,および咀嚼能力の測定を行った.その結果,咀嚼時の座位姿勢は,これまでの検討結果と同様,足底が接地しているほうが,非接地の時と比較して,頭部と体幹の保持の安定性が得られることがわかった.一方,咀嚼運動と咀嚼能力については,足底接地の座位姿勢時は,足底非接地の時と比較して,咀嚼時の下顎運動の開口量のばらつきが少なく,かつ咀嚼能力は高くなることがわかった. 以上のことから,足底接地の座位姿勢における咀嚼時には,足底非接地の座位姿勢時と比較して,頭部と体幹の保持能力が向上し,運動の経路(開口量)が安定した再現性のある下顎運動が営まれる結果,高い咀嚼能力が発揮されることが明らかとなった.すなわち,摂食時には,両側の足底を接地した座位姿勢が望ましい食事姿勢であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,人からデータをサンプリングする必要がある.データのサンプリングにおいては,データが心理的要因に大きく左右されるため,環境の設定が非常に重要である.特に,動作解析,重心動揺のデータサンプリングは,音や光などの外乱因子が排除できる環境下で実施する必要がある.昨年度に続き今年度も,新型コロナウイルス感染拡大防止に関する本学の研究活動に係わる行動指針等(BCP)により,被験者の確保,研究の環境整備,ならびに研究の遂行等に多大な影響が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
文部科学省作成の「感染拡大の防止と研究活動の両立に向けたガイドライン(改訂)(令和2年10月6日)」,ならびに本学の新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動指針(BCP)に定められている「研究活動における感染防止のための確認事項」等の変化に留意しながら,昨年度および今年度の経験を活かして,次年度は,計画調書の計画に則り,被験者数を増やすとともに,姿勢制御,顎口腔と身体の機能の関連性と因果関係を解明すべく,研究課題を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
1.現在までの進捗状況の理由から,研究を計画通りに進めることができなかった.したがって,予定していた「運動力学的評価に係わる設備備品と消耗品」の購入に至らなかった. 2.本研究課題の遂行に重要な,現有の測定機器が故障したが,新型コロナウイルス感染症に係わる社会情勢のために,修理部品が整わず,修理の完成が次年度以降の予定となった. 以上のことから,次年度使用額が生じることとなった.次年度は,計画調書に則し,本研究課題を推進していくために,現有機器の修理を完了し,かつ必要な備品等を購入する予定である.
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備考 |
2021年には,日本補綴歯科学会東北・北海道支部の生涯学習公開セミナーおよび所属研究機関の部局内における歯学研究セミナーの,2022年には,所属研究機関の部局内における同門会の講演会および徳島大学病院のキャリアアップ講演会のそれぞれ招待講演で,本研究課題に係わる成果の一部を発表した.
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