研究課題/領域番号 |
19K10220
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 助教 (50468500)
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研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 振盪培養 / HDAC3阻害 / エピジェネティクス / 分化制御 |
研究実績の概要 |
本研究は,HDAC3阻害剤が将来的に歯根長制御に有効な薬剤となり得るか明らかにし,歯胚再生の実現化へ向け,歯根長を人為的に操作する技術基盤を確立することを目的としている。 1年目では、HDAC3阻害剤の影響を受ける歯原性間葉細胞のin vitroでの同定を予定していた。遺伝子改変(Osterix-cre/Floxed-Hdac3)マウスの組織学的,形態学的解析から大臼歯の象牙質もしくはセメント質がHDAC3阻害の影響を受けやすい可能性が示されている。そこ で,歯原性間葉細胞(歯髄細胞・象牙芽細胞・セメント芽細胞)へのHDAC3阻害剤添加 が,分化能及び細胞増殖・細胞老化に影響を及ぼすかを解析した。象牙芽細胞(MO6G3)および象牙芽細胞前駆細胞(D10F2)を入手し, HDAC3 阻害剤である RGFP966 を添加した結果、象牙芽細胞の分化を抑制する可能性が示唆された。さらに,セメ ント芽細胞(CM-6:Kerafast 社)を入手,同様の解析を行った結果、象牙芽細胞同様に分化を抑制する可能性が示唆された。 さらに2年目で予定していたHDAC3阻害剤のエナメル芽細胞への影響の検証を行った。エナメル芽細胞は、ラットから採取したエナメル芽細胞ライン(SFー2細胞)を用い、RGFP966の添加実験を行った。面白いことに、象牙芽細胞やセメント芽細胞とは異なり、分化抑制効果は確認できなかった。 これらの結果から、歯胚を構成する上皮細胞と間葉細胞のうち、HDAC3阻害は間葉細胞である歯原性間葉(象牙芽細胞、セメント芽細胞)が影響を受け、分化に抑制がかかることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目で予定していた解析はほぼ行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に則り、遂行していく予定である。 2年目では、エナメル芽細胞のHDAC3阻害実験を継続する。さらに、in vivoでのHDAC3阻害の表現系を解析する予定である。予定では、トランスジェニックマウスと野生型マウスから標的細胞を採取し、HDACsを網羅的に定量化し、HDAC3阻害剤の投与量を決定、歯原性組織への影響を解析する予定であったが、1年目の解析で歯原性組織(細胞)を採取することの技術的な壁に直面した。そのため、RGFP966投与量に濃度勾配を付与し、in vivoで、評定となる歯原性間葉細胞へのHDAC3阻害の影響を検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
行っていた先行研究で使用した試薬を利用可能であったため、試薬購入分を使用しなかった。しかしながら、2年目で予定していたin vivo実験に研究方法の変更が生じ、予定していた量よりも多いHDAC3阻害剤を使用することとなったため、2年目で1年目の未使用分が相殺されると考えている。
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