研究実績の概要 |
本研究は,HDAC3阻害剤が将来的に歯根長制御に有効な薬剤となり得るか明らかにし,歯胚再生の実現化へ向け,歯根長を人為的に操作する技術基盤を確立することを目的としている。 3年目では,HDAC3 阻害剤の歯根形成制御性の検証を予定し、器官原器法および腎臓被膜下への歯胚移植によって再生歯ユニット形成(象牙質,エナメル質,歯周組織の形成:右図)を誘導することを計画していた。また、2年目に計画していたがコロナの影響で実施できなかった間葉系細胞のヒストン修飾の網羅的解析を実施することを計画した。 我々が開発した振盪培養により得られた神経堤様MSCスフェアにおいてエピジェネティクス関連PCRアレイ解析による網羅的な遺伝子発現解析を実施した。神経堤様MSCスフェアにおいてHDAC9,11の高発現、ESCO1, ESCO2, AURKA, AURKBの発現抑制を確認し、細胞増殖や分化関連遺伝子への転写抑制が示唆された。 一方、器官原基法の歯原性細胞採取技術、およびin vitroでの歯胚構造再構築技術を用いた歯胚再生技術を習得し、 神経堤様MSCスフェアとiPS細胞由来エナメル芽細胞の結合による歯胚再生技術の確立も行ってきた。残念ながら技術的な結合による歯胚構築が現状で確認できなかったことから、さらなる細胞源の改善が必要なことが伺えた。しかしながら現在、通常の歯原性細胞へのHDAC阻害剤の添加実験による歯根長調整についても検証を進めている。 なお神経堤様MSCスフェアに関する技術はStem Cells Translational Medicineに掲載されている。
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