研究実績の概要 |
近年、生体材料が周囲組織・細胞に及ぼす為害作用と細胞に加わる酸化ストレスとの関連性が指摘されている。酸化ストレスとは、細胞内の活性酸素種 (ROS) レベルの上昇に伴い、superoxide dismutase, catalase, glutathione perosidaseなどの細胞内ROS消去システムが破綻した結果、細胞活性や機能の喪失、アポ トーシスやオートファジーなどの細胞死を誘導する。細胞内ROSは紫外線や電離放射線、化学物質などの外部からの物理的刺激によって過剰に発生する。また、酸化ストレスは生体材料に対する細胞の反応においても観察され、生体親和性が高いとされるチタン表面においても、細胞内ROSレベルの上昇が報告されているが、現時点で骨芽細胞の分化や骨形成に対する酸化ストレスの影響についての報告はない。 本研究では骨芽細胞の分化、1.骨形成におけるROSの影響を検討し、2.ROSの影響を阻害する、または回復させる基質を検索し、3.インプラント表面をROSの観 点から設計することを目的としている。 前年度までは高出力の紫外線照射器を購入し光析出法を用いてチタン表面にSiを担持させようとしたが、EDSおよびXPSで測定した結果、期待したほどのSiの残留が認められなかった。今年度においては、水熱処理を用いてSiおよびZnイオンの担持を試みたところ、チタン表面にイオンを担持させることができた。
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