研究課題/領域番号 |
19K10229
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土谷 昌広 東北大学, 歯学研究科, 非常勤講師 (60372322)
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研究分担者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10272262)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (90436139)
四釜 洋介 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 口腔疾患研究部, 副部長 (10588908)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋-筋膜性疼痛 / 顎関節症 / 好中球 / サイトカイン / 好中球細胞外トラップ |
研究実績の概要 |
顎関節症に伴う慢性筋痛の多くは筋・筋膜性疼痛疾患(MPS)と同様の症状を含み,異常な線維性構造(索状硬結)の存在と遷延化した炎症性サイトカイン産生を特徴とする。しかしながら,その発症メカニズムは不明であり,治療法も確立されていない。運動後の筋の超回復では細胞融合/取り込みが活発化し,障害(壊死)細胞をも取り込むことが報告されている。本研究ではその現象に着目し,運動後に浸潤する好中球の取込み(細胞融合のエラー)が炎症性筋線維の形質転換に繋がることを明らかとすることを目的として行った。 これまで①運動(咀嚼様、および強制歩行運動)時の筋組織内への好中球遊走とIL-1産生、および②炎症性サイトカインIL-1の筋衛星細胞(筋の幹細胞)の増殖/分化の誘導能について示してきた。①についてはカルディオトキシン(CTX)損傷後のIL-1KOマウス筋組織では、再生遅延を生じることが示された。この時、免疫細胞の浸潤の遅延に加えてPAX7陽性細胞(筋衛星細胞)の増加が認められた。そこで、②についてはIL1遺伝子欠損(IL-1KO)マウスより筋衛星細胞を単離、培養し、IL-1の幹細胞増殖/分化に対する作用について検討を行った。結果として、IL-1KO筋芽細胞では増殖/分化の両方で障害が認められ、その両方がIL-1β添加により回復することが明らかとなった。このIL-1を生体内で局所的に産生するのは好中球の役割と考えられる。 以上の結果から,軽度な筋組織外傷といえる運動疲労時において,好中球にはIL-1産生を介して筋機能を維持する機能的役割が示された。IL-1は主要な炎症性サイトカインとしての働きが知られる一方で、生理的な意義については不明な点が多かったが、我々の結果は筋機能維持におけるIL-1の機能的役割を示す所見であることが明らかである。
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