研究課題/領域番号 |
19K10230
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
辰巳 順一 朝日大学, 歯学部, 教授 (60227105)
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研究分担者 |
申 基てつ 明海大学, 歯学部, 教授 (40187555)
林 丈一朗 明海大学, 歯学部, 准教授 (50337507)
大塚 秀春 明海大学, 歯学部, 助教 (10271230)
鈴木 允文 明海大学, 歯学部, 助教 (60638518)
林 鋼兵 明海大学, 歯学部, 助教 (90777880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 咀嚼機能 / QOL / 歯周治療 |
研究実績の概要 |
歯周病治療が咀嚼機能の改善にどの程度関与し、国民のQOL向上に役立つのか調査した報告はない。そこで本研究では健常者と歯周炎患者を対象に歯周病治療を行い、その結果咀嚼機能がどの程度回復したのかを具体的に調査することを目的として研究を実施している。まず、歯周組織が健常なボランティアと進行程度の異なる慢性歯周炎患者について、歯周組織検査、エックス線写真撮影、アンケートによるQOL調査、並びに咀嚼機能検査を実施した。 口腔内に急性症状がある者、顎関節症がある者、咬合支持域が欠けているアイヒナー分類B1以上の者は本研究の対象から除外した。咀嚼能力値については、対照群の平均値が、239 mg/dL、実験群の平均値が180.2 mg/dLであり、対照群の平均値が実験群で有意に低下していることが明らかとなった。GOHAIを用いた総合的な口腔関連QOLの評価については、対照群の平均値が56.3、実験群の平均値が44.3であり、対照群と比較し実験群では有意に低下することが判った。咀嚼能力値と平均歯槽骨吸収率との関係を解析したところ、-0.15と低い負の相関がみられ、歯槽骨吸収率が高いほど、咀嚼能力値は低い傾向にあった。以上の結果から,歯周病の進行により咀嚼能力値および口腔関連QOLが低下することが示唆された.今後はさらに調査対象者を増やし、歯周罹患者で咀嚼能力値を低下させる要因について詳細に検討したい。現在のところ健常ポランティア22名、慢性歯周炎患者31名に検査・調査を実施し、その横断的結果をまとめた(2019年10月26日に日本歯周病学会にて発表)。さらに現在本研究に対し同意が得られる患者を増やす一方で、積極的に歯周治療を患者に行っている。各患者の調査は初診、歯周基本治療終了後、並びにメインテナンス、SPTに移行してからも調査を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、歯周組織が健常なボランティアと進行程度の異なる慢性歯周炎患者について、歯周組織検査、エックス線写真撮影、アンケートによるQOL調査、並びに咀嚼機能検査を実施した。調査件数も現在順調に増えている。ただし、研究代表者の所属変更に伴い、2大学で研究を同時進行させるため、現在代表者移籍先での研究環境を整えるべく準備をしている。2施設で研究を進めることで、より多くの被験者およびデータが回収できることが期待される。両施設での研究交流は良好で、定期的に研究打合せも実施している。移籍先の施設では一部解析機器がないため、研究予算内で補充することを検討している。さらに移籍先機関においても本臨床研究に対する倫理申請を現在準備している。明海大学での研究データは既に健常者と比較して、歯周支持組織の減少とともに患者QOLや咀嚼機能が低下する傾向が出ており、特に重度慢性歯周炎患者への歯周治療がいかに低下した咀嚼機能を回復させるかを調査し評価、検討したいと考えている。今後も、2施設間で多くのデータ回収を行い、本調査研究を成功させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続的に新規歯周病患者ならびに健常ボランティアに協力をいただき、検査を実施し積極的に歯周治療を行っていく予定である。本データの回収は当初、明海大学病院歯周病科の1施設での研究を予定していたが、研究代表者の移籍により、朝日大学医科歯科医療センター歯周病科においても研究が可能となり、より多くのデータが蓄積できる可能性が出てきた。患者治療前の横断的研究ではすでに、歯周支持組織量と咀嚼機能の低下の相関性が明らかとなりつつあり、歯周治療、特にアタッチメントゲイン量と咀嚼機能の改善あるいは患者QOLの改善がどの程度起こるかという点に特に注目していきたいと考えたいる。さらに、協力に同意を得た患者への咀嚼機能検査やQOL調査は、その後の患者の治療への参加姿勢にも変革をもたらすことが体感できており、研究の進行は比較的良好に推移している。当初の予定では200~300検体の症例を予定しており、1施設ではかなりの負担であったが、今後は2施設での研究実施により研究の進捗を加速させたいと考えている。治療途中および治療後の病状安定期に検査を実施し、歯周病治療による歯周支持組織の回復が、どの程度咀嚼機能を改善するのか、また、患者のQOLが改善するのかを調査したい。最終年度の2023年度までの間にできる限りの被験者数を集め、本研究の成果を公表できるよう準備したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究実施に必要な研究機器が整備されており、現時点での調査研究には既存の消耗品を使用することで対応可能であった。しかし、研究代表者の施設移動に伴い、今後の研究機器ならびに消耗品費が研究計画立案時以上に必要なことが予想されており、2020年度は昨年度の研究予算並びに今年度の研究予算のほぼ全額を使用する予定である。 研究の遂行には支障は生じず、当初の予定通りの再プル回収と解析が実行できるものと考えている。
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