研究課題/領域番号 |
19K10235
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研究機関 | 日本歯科大学東京短期大学 |
研究代表者 |
小池 麻里 日本歯科大学東京短期大学, その他部局等, 教授(移行) (00234667)
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研究分担者 |
堀江 哲郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10508675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金属粉末積層造形法 / チタン合金 / インプラント / 機械的性質 / 生体親和性 / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
デジタル技術を用いてカスタムメイドできる金属粉末積層造形法を利用して,生体環境に応用できる表面性状と強度を備えたインプラントの製作と応用を目指した研究計画である. まず,前年度に引き続き,オッセオインテグレーションしやすい表面性状を設計し,グローバル技術革新センターにレーザビーム粉末積層造形装置にてTi-6Al-4V ELI 合金製のダンベル型試料の作製を依頼し,ISO 6892に従って,その機械的特性を評価した.対照群として,積層造形によるSolidのダンベル型試料を用いた.前年度作製した対照群と同じサイズであるが,表層0.5㎜を格子にしたデザインは,積層方向に平行な正方形であった.作製時のビーム熱が影響し,格子表面が粗くなったことから,今年度は,菱形にデザインを変更し評価した.表面の粗さは改善されていたが,引張強さの低下と伸びの増加となった.しかし,表面形状は,鋳造・鍛造の切削によって製作された試料と比較すると荒くなっていた.正方形格子状ダンベル試験片の強度は,Solid積層試料片の強度と有意な差は認められなかったが,伸びの減少が認められた.試作試料の破断面を走査電子顕微鏡にて観察したところ,原材料は同じなので,同じ破壊様式を呈していた.引張試験の結果から,格子デザインによる影響が確認でき,格子のサイズと形状についてさらなる検討が必要であることを明らかにした. しかし,積層法によるインプラント体の作製にかかるコストの大幅な削減,納品の短期化が可能であることから,さらに生体材料として最適な格子サイズと形状を検討することで,使用期間の延長に確実に繋がると自負している.また,医療費の削減と患者が治療機関へ通院する期間と時間の短縮にも繋がっていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験に使用する試料製作をグローバル技術革新センターにレーザービーム粉末積層造形装置にてTi-6Al-4V ELI 合金粉末を用いて試作することを依頼し,2020年2月に試作試料の引き渡しが行われ,機械的性質を評価するための万能試験機にて引張試験を行い,試験前後に走査型電子顕微鏡にて表面観察と破断面観察を行った.この観察の結果より,格子デザイン部に製作時レーザービーム熱の影響が確認できたため,試料サイズはそのままで,格子デザインを変更した試料製作をグローバル技術革新センターに再度依頼し,格子デザインによる強度と粗さへの影響を調べ,その結果を分析している. しかしながら,コロナ感染拡大の影響と日本歯科大学共同利用研究施設の改築工事の延長のより,実験の遂行がままならない環境が続いているため,生体親和性に関する実験の計画の進行は遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染に十分配慮しながら,共同利用研究施設における通常の実験計画を遂行できる環境が整った時点で,研究計画に沿って遂行していく予定にしている. 前年度に引き続き,試料表層のデザイン等の決定に尽力し,金属多孔構造体を試作する.万能試験機を用いて,その試料の機械的特性の評価と,積層造形層表面および破断面について走査電子顕微鏡での精査を繰返し,インプラント体として最適な試料作製を目指す. 同時に,口腔内使用を想定し,作製した格子状試料をS. mutansとC. albicansが共存する環境下にさらすことで評価する細菌付着試験とISO 10993-5 (2009) に準じたBalb/c 3T3マウス繊維芽細胞 (購入済み)に対するMTT アッセイを測定した結果を指標とする細胞毒性試験にて,作製したインプラント体を目指した試料に対する親和性を評価する予定にしている. しかしながら,コロナ感染拡大状況下のため,感染拡大しないような配慮をしながら実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大に伴い,試料製作を依頼していたグローバル革新センサーの技術者との連絡方法の確立に時間を要し,また,実験実施場所である日本歯科大学共同利用研究施設の改築工事の延長に伴い,実験を中断せざるを得なくなった.しかし,オンライン会議の確立と工事終了で,今後は,感染拡大に十分配慮しながら実験を進めることにしていることから,次年度での使用を予定している.
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