研究課題/領域番号 |
19K10242
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金澤 学 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (80431922)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工知能(AI) / CAD/CAM / 全部床義歯 / 設計システム |
研究実績の概要 |
日本における無歯顎補綴の第一選択は全部床義歯である.しかし,超高齢社会により,無歯顎における高度顎堤吸収症例が増加しているため,歯科医師と歯科技工士には高度な知識と技術が要求されているが,全部床義歯補綴に熟練した歯科医師と歯科技工士は少なく,育成も困難な状況である. 近年,医療分野において人工知能(AI)の研究が盛んに行われ,欧米では皮膚がんや認知症の検査,心臓発作の予測にAIが活用され始めている.歯科医療分野では,高精度な口腔内スキャナより3次元データとして記録が可能となったため,歯科疾患の診断・治療方針の決定時の補助ツールとして,画像データ解析にAIの活用が期待されている.一方,本研究テーマである全部床義歯製作過程は多くの部分のデジタル化が行えたが,AIは未だ活用されていない. 本研究の目的は,「デジタル化された義歯製作」において「CADソフトでの義歯設計」を担うAIを開発し,フルデジタル化されたAIアシスト型全部床義歯製作システムを完成させることである.具体的には,顎間関係が記録された上下無歯顎顎堤3次元データの入力から,適切な全部床義歯形態(義歯 床縁形態,人工歯排列,研磨面形態)を出力させるAIを構築する. このシステムの完成により,第一により均質化(クオリティコントロール)された義歯の提供が可能となり,無歯顎患者のQOL向上が期待できる.また,費用対効果が更に向上し,歯科医療費の削減も期待できる.第二に遠隔医療と在宅歯科診療への応用が考えられる.第三に,再生産性の高さを生かし災害時に保存されているデータを活用して,即時に義歯を製作することが可能となる.さらに,海外での高い波及効果を期待できる.将来的に,部分床義歯も含めた全ての可撤性義歯をこのフルデジタルシステムで製作可能となれば,今後増加する義歯の装着が必要な高齢者にとって有益であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年~2020年度は,光学3Dスキャナを用いて無歯顎研究用模型および全部床義歯の3Dデータを採取し,全部床義歯データバンクでのデータ蓄積を行い,全部床義歯設計AIモデルの開発を行う予定である.本研究は,東京医科歯科大学歯学部附属病院倫理審査委員会に承認されている(承認番号:D2019-062). 2020年4月現在,研究者が分担研究者として参加している臨床研究,「上下無歯顎患者に対するCAD/CAM全部床義歯の前向き臨床研究」(課題番号:18K09696)において,新義歯セットまで完了した患者,義歯13人に対する新義歯のスキャンが終了している.引き続き患者新義歯セットが終了次第,義歯データの収集を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現在,新型コロナ感染症による非常事態宣言という特殊な社会情勢により研究は一時停止している.しかし,社会的状況が改善し,研究の再開が可能となれば引き続き無歯顎患者の模型と製作させた適切な上下全部床義歯の3Dデータを採取し,全部床義歯データバンクへのデータ蓄積を行ったのち,全部床義歯AI設計モデルの開発を行い,全部床義歯設計AIに機械学習を行わせる計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集のため購入を予定していたスキャナーの最新版を次年度に購入することにしたため.
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