研究課題/領域番号 |
19K10242
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金澤 学 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80431922)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 回帰分析 / 微分多面体 |
研究実績の概要 |
本研究は全部床義歯形態の数理解析による全部床義歯デザインの自動化を目指すことを目的とし,1から3の順番で遂行していく. 1.全部床義歯形状データ収集 口腔内で安定している上下全部床義歯を上下咬合させた状態で技工用スキャナ(E-3, 3shape)にてスキャンを行い,そのSTLデータを取得する.さらに,取得したSTLデータをデータ上での計測が可能なCAD ソフト(Autodesk Fusion 360)に取り込む.2.全部床義歯の咬合平面の決定:回帰分析理論をもとにして,既存の義歯STLデータ上の各ランドマーク(義歯上の特徴的な構造物)との距離の相関関係を定式化し,その式を用いて上下顎の顎堤のみのデータから咬合平面予測値を算出する3.人工歯排列位置の決定 :咬合平面が決定されると人工歯排列が可能となるため,自動的に排列位置を決定することが可能となる.前歯の人工歯排列に関しては,矢状面からみた人工歯の歯軸傾斜角度について,顎間関係(上顎,下顎の位置関係)による 3 種類の排列パターン(骨格性Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ級)を設定するために,それぞれの排列パターンに対応する角度の範囲を規定する.4.歯肉のデザインの決定: 歯肉のデザインの決定方法として,CADソフト上でスキャンした義歯データを前歯から臼歯部にかけて頬舌的に数カ所で分割し,各々の分割面における頬側と舌側の床の研磨面形態を明示し,歯肉の曲面形態を微分多面体で近似することによって数式を求める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微分多面体の応用による歯肉デザインの自動化においては今後更なる共同研究企業とのディスカッションが必要であるものの,回帰分析に必要な義歯STLデータが約70症例蓄積されており,現時点での症例数で算出した回帰式でも比較的当てはまりの高いものとなっていること,各々の顎間関係(上顎,下顎の位置関係)における人工歯排列位置を決定するための具体的な角度の目星が付いていることを評価し,上記の進捗状況区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
回帰分析においては,今後もデータ数を増やし精度を上げていく. 歯肉デザインにおいては,共同研究企業とのディスカッションを重ね,論点の性差や方向性の解像度を高めつつ,まずは初期フェーズでの検証・テストモデリングに向けて動くといった方針で着手していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で,高齢者の患者さんの来院が一時的に大いに減少した.その後,少しずつ増加はしているがまだ以前よりも少ない状況である.目標データ数に到達させるため,もう1年間本研究を実施する必要があると判断した.次年度も引き続き,データ測定を継続しデータ数を増加させ,回帰式の精度を上げ,最終的に目的とするシステムの精度を上げていく予定である.
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