オボアルブミン(OVA)を顎関節腔に注入し顎関節炎を発症させた卵巣摘出家兎に塩酸ケタミン60mg/kg筋注とペントバルビタールナトリウム0.35mg/kg緩徐静注による全身麻酔を施した。顎下部正中切開で下顎骨下縁を露出させ、皮質骨骨切り はオトガイ孔と第一臼歯間で行った。骨切り部位から対称的にキルシュナーワイヤー( 直径2.0mm)を経皮的に貫通させ、結紮線と 即時重合レジンによって自作製延長装置と固定した。前方へ延長させたものを下顎頭部の圧縮群、後方へ延長させたものを伸展群の2群に分けた。各群、待機期間を設けずに0.25mm/回を2回/日のペースで7日間、計3.5mmの延長を行った。各群延長終了直後、1週後、2週後、4週後に2羽(4側)ずつ計16羽(32側)の試料(滑液・ 下顎骨)採取した。実験群は各群12羽(24側)ずつ計24羽(48側)の下顎骨延長を行い、対照群は以下の3群とした。対照群A: 卵巣摘出家兎の顎関節腔にOVAを注入せず、下顎骨を延長させた圧縮群12羽(24側)、 伸展群12羽(24側)の計24羽(48側)。対照群B: OVAを顎関節腔に注入した卵巣摘出家兎で骨切りを行わない3羽(6側)、骨切り を行うも下顎骨を延長しない3羽(6側)の計6羽(12側)。対照群C: OVAを顎関節腔に注入しない卵巣摘出家兎で骨切りを行わない3羽(6側)、骨切りを行うも下顎骨を延長しない3羽(6側)の計6羽(12側)とした。2020年度は対照群Bまでの下顎頭の標本と顎関節滑液を採取していたため、2021年度は対照群Cの実験を行い、標本と滑液を採取しマイクロCTによる画像評価と組織学的評価、さらに滑液解析を行った。OVA注入により顎関節炎を発症した家兎の下顎頭に圧縮刺激を与えた顎関節滑液から炎症性サイトカインであるTNF-αを高率に検出でき、さらに下顎頭吸収も顕著に認めた。
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