研究課題/領域番号 |
19K10259
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (20193211)
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研究分担者 |
丸川 恵理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40419263)
池田 やよい 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (00202903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨再生療法 / 軟骨内骨化 / 間葉系幹細胞 / 脂肪幹細胞 / 軟骨細胞 / 足場材料 / ヒアルロン酸 |
研究実績の概要 |
従来の幹細胞を移植する骨再生療法は、移植部位の血液循環の不足により、適用できる骨欠損の大きさに限界がある。一方、軟骨細胞は低酸素・低栄養が不足した虚血環境に対して抵抗性をもっている。そのため軟骨を移植して軟骨内骨化を誘導する骨再生法が注目されている。しかしながら、移植に用いる軟骨を培養して作製するのには、多大なコストと労力がかかる。もし、未分化のままの幹細胞を直接、移植して軟骨内骨化を誘導することができれば、軟骨を培養して作製する過程を省くことができる。そこで本研究は、未分化脂肪幹細胞の生体内における自発的な軟骨内骨化を誘導する方法の確立することを目的としている。 (1)ヒト間葉系幹細胞の増殖促進に用いられる線維芽細胞成長因子2(FGF2)に加えて低濃度のトランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)を添加すると、間葉系幹細胞の肥大軟骨分化能および生体内での軟骨内骨化能が著明に向上することを見出した。 (2)生体内での軟骨分化・軟骨内骨化に最も適した環境を提供する足場材料を明らかにするため、脂肪幹細胞および骨髄間葉系幹細胞を骨の無機成分を含まない生体吸収性の生体材料と共に生体外で肥大軟骨に分化させた後、免疫不全マウスに移植した。その結果、生体内における軟骨内骨化による骨形成に有効と考えられる足場材料を見出した。 (3)本研究は、未分化脂肪幹細胞の生体内における自発的な軟骨内骨化を誘導する方法の確立することを目的としている。しかしながら、未分化の幹細胞を移植して生体内で軟骨内骨化を誘導することは困難であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ヒト脂肪幹細胞の軟骨分化能を亢進する成長因子についてはTGF-β1の添加が有効であることを見出し、当初の研究目的の一つを達成した。 (2)生体内で軟骨内骨化を誘導するのに最適な足場材料については、ヒアルロン酸を架橋したハイドロゲルが一般に使われているコラーゲンゲルと比較して多くの点で優れていることを見出した。培養下で生成された軟骨の分化マーカーの生化学的および分子生物学的解析はほぼ終了した。現在、移植後に軟骨内骨化によって形成された組織の組織学的な解析をおこなっている。 (3)大型の実験動物を用いて有効性を確認する予定であったが、未分化の幹細胞を移植して生体内で軟骨内骨化を誘導することは困難であることがわかった。そのため、当初の予定を変更し、細胞を用いない骨再生法の検討をおこなった。その結果、将来の骨再生療法への応用に繋がる可能性のある予想外の結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)生体内で軟骨内骨化を誘導するために最適な足場材料については、現在、移植後に軟骨内骨化によって形成された組織の組織学的な解析とμCTを用いた石灰化の解析をおこなっており、今年度中にその研究成果を論文にまとめて発表する予定である。 (2)本研究は未分化のままの幹細胞を直接、移植して生体内で軟骨内骨化を誘導することを目指したが、昨年までの実験で、未分化の幹細胞を移植して生体内で軟骨内骨化を誘導することは極めて困難であることがわかった。それに代わる方法として、生体が本来持つ骨折の治癒過程、特に血管新生と低酸素環境に着目して研究をおこなった。その結果、骨欠損部位の血流不足を改善し、骨形成を促進する生体材料の組み合わせを見出した。この方法では、細胞を移植せず生体内の細胞を活性化する方法のため、臨床応用するためのコストと労力を大幅に軽減できると期待される。今年度は、昨年度までの解析で有効性が明らかになった生体材料について、マウスの生体内に移植後の骨形成を詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
生体内で軟骨内骨化を誘導するために最適な足場材料については、現在、移植後に軟骨内骨化によって形成された組織の組織学的な解析とμCTを用いた石灰化の解析を次年度まで継続することになった。さらに生体が本来持つ骨折の治癒過程、特に血管新生と低酸素環境に着目した研究では、骨欠損部位の血流不足を改善し、骨形成を促進することが明らかになった生体材料の組み合わせについてマウスの生体内に移植後の骨形成を詳細に解析する動物実験が次年度まで継続することになったため、マウスの飼育費用を残しておく必要が生じた。
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