研究実績の概要 |
マウス鼠径部から脂肪組織を採取し,コラゲナーゼ処理および遠心分離操作を行うことで,成熟脂肪細胞およびStromal vascular fraction(SVF)を分離した.SVFをフラスコに播種することで脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)を、成熟脂肪細胞の浮力を利用した天井培養法により脱分化脂肪細胞(DFATs)をそれぞれ樹立した.ADSCs,DFATsを生理食塩水に懸濁し,凍結・溶解操作,遠心分離操作を加えることで,ADSCs由来の細胞抽出物(CE-ADSCs),DFATs由来の細胞抽出物(CE-DFATs)を作製した.Mouse Angiogenesis Array Kitを用いて解析したところ,CE-ADSCs,CE-DFATsともにCoagulation Factor III, FGF-2, HGF, Osteopontin, SDF-1, VEGFなど多数の血管新生関連タンパクを発現していた。CE-ADSCsを添加した培地を用いてラットSchwann細胞および脊髄後根神経節(DRG)ニューロンを培養することで,CE-ADSCsの添加がSchwann細胞を増殖させ,DRGニューロンの神経突起伸長を促進することが明らかとなった. 次に全身麻酔下でラットの下歯槽神経を切断し,同部に生体吸収性ハイドロゲルを足場としてCE-ADSCsを移植後に,神経再性能を神経マーカーであるProtein Gene Products 9.5を用いた免疫組織染色で評価した.コントロール群(生食移植)では切断側近位断端から放射状に乱雑な神経線維が伸長したのに対し,CE-ADSCs移植群では、神経線維が近位断端から遠位方向へ乱れなく伸長した様子が確認された.以上のことからCE-ADSCsおよびCE-DFATsの移植は神経再生治療における有用な選択肢となる可能性が示唆された.
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