研究課題
様々な細胞から分泌されるエクソソームは細胞外小胞体の一つであり、細胞間コミュニケーションの担い手として、疾患の診断や治療のツールとして注目されている。我々は、ヒト智歯由来の歯髄細胞から細胞株を樹立し、その細胞培養の培養液上清から、エクソソームを精製し、マウスの絹糸結紮による歯周炎誘導モデルを用いて、歯槽骨量の減少を抑制することを見出した。さらに、歯髄細胞由来のエクソソームをマウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞及び破骨細胞誘導時に転化した際に及ぼす影響について評価を行った。MC3T3-E1細胞にヒト歯髄細胞由来のエクソソームを添加し、スクラッチアッセイにて細胞遊走能を評価した。その結果、ヒト歯髄由来のエクソソームを添加することにより、MC3T3-E1細胞の遊走能は促進された。また、マウス骨髄細胞とストローマ細胞ST2を共培養し、その過程にヒト歯髄細胞由来のエクソソームを添加した際の破骨細胞の形成能をTRAP染色および定量的RT-PCRにて、破骨細胞の分化因子であるRANKL、炎症性サイトカインTNF-αの発現遺伝子を確認した。その結果、破骨細胞形成能については、TRAP陽性コロニー形成に抑制傾向がみられ、コロニーサイズは小さかった。発現遺伝子の定量的RT-PCRにおいては、RANKL、TNF-αのいずれにおいても発現は低下傾向を示した。ヒト歯髄細胞由来のエクソソームは、マウス骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の遊走能を増加させ、破骨細胞の形成やその分化因子であるRANKLの発現、TNF-αといった炎症性サイトカインの発現を減少させたことから、骨のリモデリングや歯周組織の再生に関与する可能性が示唆された。
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J Periodont Res.
巻: 57 ページ: 162-172
10.1111/jre.12949