研究課題/領域番号 |
19K10264
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡部 一登 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50801453)
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研究分担者 |
酒井 陽 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80772425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線性顎骨壊死 / エクソソーム / 歯髄幹細胞 |
研究実績の概要 |
頭頸部がんの組織型は放射線治療の効果が高いとされる扁平上皮癌が90%を占める.そのため,放射線治療は機能温存の観点から手術療法とともに頭頸部がんに対する治療法の中心を担う.しかしながら,放射線治療による有害事象は不可逆的なものが存在し,その中でも顎骨壊死(ORN)は著しく患者のQOLを低下させるにもかかわらず,治療法は確立しておらず,対応に苦慮することが多い.本研究の目的は,ヒト歯髄幹細胞(DPSCs)由来エクソソーム を用いた放射線治療によるORNの治療法を開発し,発症機序を解明することである. ORNの発症機序として,骨髄内の間葉系幹細胞(MSCs)の機能低下に着目した.前年度までに放射線照射することにより,MSCsの遊走能,増殖能,分化能が低下することを確認した.DPSCsの培養上清から超遠心法によりエクソソームの安定した獲得を確立し,アポトーシス抑制や血管新生,抗炎症作用に関与する関連遺伝子を同定した. 今年度はラットORNモデルの作製に時間を費やした.当初,予定していた手法では安定したモデルの確立に至らず,共同研究者と相談し,放射線照射の条件検討をやり直した.当初設定していた照射線量を減少させ,照射回数も複数回から単回とすることで現在のORNモデルを確立した. 次年度はDPSCs由来エクソソームとの共培養による放射線照射したMSCsの多分化能,細胞増殖能,細胞遊走能,関連遺伝子の発現量の変化を評価する.また作製したラットORNモデルにDPSCs由来エクソソームを投与することによる抜歯窩の治癒状態を評価する.これらのin viroおよびin vivo実験の結果をもって,マイクロアレイを用いたDPSCs由来エクソソーム中のmiRNAプロファイリングを実施し,ORN発症機序に関連するmiRNAを探索する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに放射線照射したラット MSCsの遊走能,増殖能,分化能のいずれもが低下していることを確認した.またDPSCsの培養上清から超遠心法によるエクソソームの分離法を確立した.透過型電子顕微鏡により粒径は約100nmであり,ウエスタンブロット法で特異的表面抗原であるCD63,CD81,CD9の発現を確認している.定量RT-PCR法ではアポトーシス抑制や血管新生,抗炎症作用に関与する関連遺伝子を同定した. 今年度はラットORNモデルの作製に時間を費やした.前年度は過去の報告を参考に作製していたが,安定したモデルの確立に至らなかった.そこで,共同研究者に相談して放射線照射の条件検討をやり直し,現在のモデルの確立に繋がった.途中,コロナ禍,動物実験施設の移転の影響で動物の搬入,飼育を中断せざるを得ない状況となり,大幅に遅延が生じた. 放射線照射の条件変更に伴い,in vitro実験の結果についても再検討を余儀なくされた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度でも課題であったラット ORNモデルが概ね確立したため,当初予定していた実験を進めていく.そして,DPSCs由来エクソソーム の有効性をin vitro実験およびin vivo実験で示すことができれば,マイクロアレイにより網羅的に解析し,発症機序の解明に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に遅延が生じたため,今年度予定していた実験を実施するため,次年度使用額が生じた.
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