研究実績の概要 |
ヒト由来骨格筋前駆細胞の内、筋衛星細胞(HsKSMC)と筋芽細胞(HSMM)を用いてSVVYGLR(SV)ペプチドが両細胞の生物学的特性に及ぼす影響について検討を行った。HsKSMC, HSMMをSVペプチドもしくはPBS, 非機能性ペプチド(random SV)混和培地でWST assayによる細胞増殖能を測定したところ、三群間で有意差を認めなかった。また両細胞の初期接着能についても明らかな差はみられなかったが、細胞遊走能(Boyden chamber assay)ならびに細胞運動能(Wound healing assay)についてはHsKSMC, HSMMともにSVペプチド添加培地条件下で遊走能、運動能は有意に上昇した。さらに、筋衛生細胞から筋芽細胞への分化、あるいは筋芽細胞から多核の筋管細胞への分化誘導に関わる特異的転写調節因子であるMyoD, MyogenineはともにSVペプチド添加条件下で発現が上昇することが明らかとなった。さらに、HsKSMC, HSMMにおけるSVペプチドによる遊走能上昇はTGF-β1阻害剤添加条件下で抑制され、Western blotting法によりSVペプチド添加条件下でリン酸化Smad3の検出傾向が強く観察されたことからTGF-βシグナルが作用機序に関与している可能性が示唆された。SVペプチドを添加した分化培地においてHSMMからの筋管形成は対照群(PBS, random SV)と比較して有意に増加したことからも、SVペプチドは骨格筋前駆細胞の遊走能を上昇させて成熟した筋管細胞を形成する過程を賦活化することで、骨格筋再生修復を促進することが推察された。
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