研究課題/領域番号 |
19K10267
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
多田 美里 (平岡) 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40572326)
|
研究分担者 |
武知 正晃 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (00304535)
二宮 嘉昭 広島大学, 病院(歯), 助教 (60335685)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 多孔質セラミックス / 骨芽細胞 / 顎骨再建 |
研究実績の概要 |
自家骨移植に代わる骨再建法として,これまで我々は多孔質セラミックス(IP-CHA)と骨芽細胞,成長因子複合体の培養人工骨が有用であること,培養人工骨における各種成長因子の骨形成促進作用を報告してきた。本研究では,IP-CHA/骨芽細胞/成長因子複合体による培養骨の骨代謝を分子生物学的,組織学的に評価し,培養骨とチタンインプラントとのosseointegrationおよびインプラント周囲骨の骨形成促進制御分子や遺伝子発現変化と骨代謝への関与について検索することで,顎骨再建および咬合・咀嚼機能の獲得を目的とした培養人工骨を用いた再生医療の確立を目的としている。 顎骨は口腔内細菌などの生物学的刺激や化学的刺激,咀嚼力などの力学的刺激に曝されており,全身の骨格系と比して高頻度のリモデリングを必要とする。インプラントを長期にわたり機能させるためには,局所の骨代謝状態の解析および骨形成調節因子のコントロールが重要であり,インプラント周囲の培養人工骨の骨代謝がどのようなシグナル伝達系で行われているのかを解明する必要がある。そのため,本年度は我々がこれまでに作製したインプラントと良好なosseointegrationが獲得できる高機能培養骨にTGF-β1等の成長因子を添加し,培養人工骨における細胞挙動や骨芽細胞分化を制御するシグナル因子の解析を行った。その結果,培養人工骨において,細胞内分子と細胞内シグナル伝達系が各種骨形成マーカーの発現に特異的な作用をきたして骨芽細胞の分化を促進,制御している可能性が明らかとなり,培養人工骨の臨床応用に向けた基礎的な裏付けがなされると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はin vitroおよびin vivoにおけるインプラント周囲培養人工骨の骨代謝とリモデリングの解析を行う予定であったが,培養人工骨を動物モデルに移植し,インプラントを埋入しその周囲骨における検討ができなかった。 骨基質中の各種成長因子やサイトカインが骨吸収に伴い骨基質から放出され,骨芽細胞を活性化することや,局所の力学的負荷が骨吸収を抑制し骨形成を誘導することが知られており,次年度は人工骨移植モデルを用いて,インプラント周囲培養骨の咬合力による機械的応力に伴う骨代謝回転について検討し,インプラント周囲培養骨での細胞挙動,骨芽細胞分化を制御するシグナル因子を明らかにし,局所のリモデリング調整因子を解明する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでインプラントと良好なosseointegrationが獲得できる高機能培養骨を作製してきたが,さらにインプラントが長期にわたり良好に機能するためには,その周囲骨が適正にリモデリングし続けることが必要であり,インプラント周囲培養骨における骨代謝状態を評価することは臨床応用にむけて基礎的な裏付けがなされると考え,引き続きインプラント周囲培養骨での細胞挙動,骨芽細胞分化を制御するシグナル因子,局所のリモデリング調整因子の解析を行う予定である。 また,骨代謝性疾患を有する患者に培養人工骨を応用した骨形成の報告は少なく,不明な点が多く,骨粗鬆症モデルにおける培養骨の骨代謝を解析することは臨床応用に際して非常に有用であると考える。骨粗鬆症モデル動物への培養人工骨移植による骨形成メカニズムおよび骨代謝の解析も順次行う予定である。 現在までに,我々はIP-CHA/骨芽細胞/成長因子複合体による培養骨の作製および動物への移植実験は行っており,今後は移植した培養骨へインプラント埋入を行うこととなるが,申請者らは臨床においてインプラント治療を日常的に行っており,手技的には問題ないと考える。また,骨粗鬆症動物モデル作製においても既に報告されている方法に従って行う予定である。
|