研究課題
本研究課題では、ヘミデスモソーム構成因子のひとつであるBP180(180 kDa bullous pemphigoid antigen, collagen XVII)に着目した、がん進展制御機構の解析と、当該因子の発現制御機構の解明を行なった。細胞外マトリックスの一形態である基底膜は、がん細胞浸潤の物理的障壁となっている。実際に、近年の報告によって、癌細胞の浸潤・転移などの細胞運動時に、基底膜の 細胞間接着様式の一つであるヘミデスモソーム構造の解離や再構築が起きていることが明ら かとなってきている。そのような背景のもと、本研究では、口腔癌(舌癌、歯肉癌)の組織学的解析において、正常組織では基底膜のみに局在しているBP180が、癌組織では、その辺縁 領域に集積していること、さらに、その局在は、野生型p53の局在と必ずしも一致しておらず、悪性腫瘍細胞に発現しているBP180には、p53非依存的発現制御機構が存在することを見出した。そこで、BP180の発現制御機構について、非コードRNAの関与に着目した解析を行なった。その結果、正常およびがん組織においてBP180を制御するmicroRNAとしてmiR203を同定し、特に、変異型p53遺伝子をもつ口腔扁平癌細胞では、miR203を介したBP180の発現制御が行われていることを実証した。さらに、3D培養実験により、がん組織におけるBP180が、接着装置としてだけではなく、基底膜の形成や維持にも寄与していること、また癌の浸潤機構には、そのシステム崩壊が深く関わっていることを明らかにした。
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Mol Metab
巻: 54 ページ: 101360
10.1016/j.molmet.2021.101360