研究課題
顎骨骨髄炎は抗菌化学療法が進歩した現代においても,歯科領域では難治性の感染症と認識され,広範囲な顎骨切除が選択される場合も少なくなく,その原因 は,歯性感染からの炎症の波及と言われているが,詳細な発症機序については明らかにされていない.本研究では,顎骨骨髄炎発症における歯原性上皮・間葉系 細胞と骨リモデリングの関連性を解明し,顎骨骨髄炎に対する新たな治療戦略に必要な知見を得ることを目的としている.本研究を遂行するため,未分化骨芽細胞を用いて,細菌感染環境下における細胞性質変化と骨分化マーカーの発現解析を行い,歯性感染症と顎骨の病態変化との因果関係について検討する. 方法:感染環境下における,骨芽細胞と顎骨骨髄炎発症過程との関与を検証するため,歯性感染症における骨代謝マーカーの発現解析を行った.骨分化培地上で培養,黄色ブドウ球菌由来LTA添加後,各培養時間で,その動態を観察した.その結果,転写因子:Sp7, ATF4は低濃度で発現増強,骨分化マーカー:ALPはLTAによって発現増強,BSP,OCNは高濃度で発現抑制された.骨形成マーカー(ALP,OCN,OPG)の遺伝子発現は,低濃度のLTAで促進された.高濃度のLPSは石灰化能を抑制し,低濃度のLTAの添加により石灰化抑制が抑制され,抑制された骨分化マーカー(ALP,BSP,OCN)の遺伝子発現量が回復した.さらに,骨分化に関連するシグナル経路であるp38の抑制は,腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-6(IL-6)の遺伝子レベルの発現に相反する影響を与えたことから,LTAとLPSの混合感染は,炎症マーカー(TNF-αおよびIL-6)とp38経路が関与し,濃度傾斜を通じて骨分化に相反する影響を及ぼすと考えられた.
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International Journal oh Molecular Sciences
巻: 23 ページ: -
10.3390/ijms232012633