研究課題
2022年度は、唾石溶解の実験を行った。我々が目指している唾石溶解療法は国内外で既報告はなく、国際的にも挑戦的な新規研究であり、不明な点が多い。そこで、唾石の溶解溶液を新規に探索し、石灰化物の溶解に広く使用されているクエン酸を利用した。クエン酸にはその酸性度から抗菌作用があることも知られており、クエン酸単独でも細菌塊を融解する作用もあると考えられた。また、有機成分、とくにタンパク質の溶解剤と殺菌作用がある次亜塩素酸ナトリウム水溶液も溶解液として使用した。唾石溶解実験では、乾燥唾石をクエン酸溶液に浸漬させ、デジタル動画撮影を連続的に行い、溶解の様相を定期的に撮影し記録した。その結果、唾石は発泡しながら徐々に溶解することを確認した。クエン酸はカルシウム沈着物の溶解剤として食器などにも利用され、適正濃度であれば生体への安全性は担保できる。しかし、実際の唾石溶解時間には数時間が必要であり、臨床的に唾液腺内視鏡下唾石溶解療法を応用するにはさらなる工夫が必要と考えられた。次に、次亜塩素酸ナトリウムによる溶解実験を行なった。乾燥唾石を5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬させ、デジタル動画撮影を連続的に行い、溶解の様相を定期的に撮影し記録した。その結果、唾石は5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液により急激に溶解することを確認した。24時間後にはほぼ完全に唾石は溶解した。つまり次亜塩素酸ナトリウム水溶液はクエン酸溶水溶液よりも溶解効果が高い結果であった。しかし5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液は粘膜為害性が報告されており、生体粘膜への応用には解決するべき課題がある。そこでクエン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との併用で、抗菌効果の増強と作用時間の短縮が期待される。今回は両溶液の併用実験までは実施できず、今後の課題となった。
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