研究課題/領域番号 |
19K10276
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
下間 雅史 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (50612008)
|
研究分担者 |
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20380090)
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00611998)
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
寺田 知加 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40460216)
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90380089)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 蛍光診断 / 口腔癌 / 5ALA |
研究実績の概要 |
口腔癌を早期発見することは予後の向上や治療後のQOLの維持に重要であり、肉眼的に発見困難な微小病変を正確かつ高感度に描出可能な新たな診断装置の開発が強く望まれている。これまでに臨床応用されている方法としてヨード生体染色法があるが、上皮性異形成と癌との鑑別診断が不可能であること、ヨードによる粘膜刺激が強いこと、角化歯肉が本来ヨード不染性のため角化歯肉病変を描出することが不可能であることなどの問題点がある。また、VELscopeに代表される蛍光診断機器も近年多用されるようになってきているが、組織の微細構造的異常を吸収域として描出するため、境界部の輪郭の不鮮明さや炎症性変化に対する擬陽性などの欠点がある。本研究では、癌細胞内に生じるポルフィリン代謝異常に着目し、アミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)を応用した口腔癌の新たな光線力学的診断法の確立を目指し、今年度は以下の検討を行った。まず、小型蛍光診断装置を用いたALA-PDDの口腔癌検出能の検討として、生検により口腔癌と診断され切除術を予定されている患者を対象として本小型蛍光診断装置によるALA-PDDを施行した。診断方法としては、診断前に5-アミノレブリン酸(ALA)を注射用蒸留水で溶解、1mg/mL水溶液とし、これに浸漬させたガーゼを病変部を含む口腔粘膜に貼付した後に本装置にて観察を行い、蛍光画像を記録した。次にヨード生体染色を行い同じく画像として記録した。切除範囲についてはヨード生体染色およびALA-PDDの検査結果をもとに総合的に判断し、十分な安全域を設定して切除した。得られた画像と切除標本から赤色蛍光部位と実際の腫瘍組織との関連につき病理組織学的に詳細に検討した。またヨード生体染色との比較検討を行った。現在、症例数を増やしながら、口腔癌検出能について検討を重ねているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに進行しており、今後はさらに症例を集めるとともに、装置の改良、さらなる検討へと準備が進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討結果、症例をもとに、小型蛍光診断装置を用いたALA-PDDの口腔癌スクリーニングとしての有用性についての検討を行う。対象は、口腔粘膜病変(口腔癌、口腔癌の疑い、上皮性異形成、白板症、紅板症など)を有し、生検術を予定されている患者のうち、本検査法について説明を行い十分な理解・同意を得られた患者とする。生検部位としては原則赤色蛍光部位とし、赤色蛍光を示さない病変においてはヨード不染帯部、肉眼的に癌が疑われる部位、またはその他の病変と思われる部位とする。赤色蛍光部位からの検体に対する病理組織学的診断を踏まえ、本装置を用いたALA-PDDの腫瘍診断精度につき検討する。また、小型蛍光診断装置にて描出した赤色蛍光部位とヨード不染帯部の組織学的比較検討を行い、白色光画像(通常のカラー病態写真)、蛍光画像、ヨード生体染色画像および病理組織像により、赤色蛍光部位とヨード不染帯での病理組織像を詳細に比較検討し、ALA-PDDとヨード生体染色の診断精度の差違や特性につき検討を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度施行予定であったマウス口腔癌モデルを用いた診断精度向上の検討については、当初予定よりも患者症例数が集まったため、臨床検体での検討を優先した。このため、動物実験での検討が未実施となり、これを次年度繰越とした。また、症例を用いた詳細なスクリーニング検討についても今年度の結果を基に進め、これらによって装置の改良に入る予定のため、これらも次年度繰り越しとしている。 次年度はこれらの検討を患者症例の積み重ねとともに行い、さらなる精度向上のための装置改良、動物実験による新たな診断方の開発とともに行う予定である。
|