研究課題/領域番号 |
19K10286
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 克比古 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (20448129)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子標的薬 / 血管新生阻害薬 / 骨代謝 / 顎骨壊死 |
研究実績の概要 |
厚生労働省の人口動態統計によると悪性新生物(悪性腫瘍)は日本人の主な死因別死亡数において第1位であり、近年増加傾向にある中、年間約 37 万人が死亡している。癌治療では各々の専門領域において従来の外科的切除や放射線化学療法という主体的な治療に加え、近年新たな試みがなされている。免疫チェックポイント阻害薬や種々の分子標的薬が導入されより選択的、効果的で副作用の少ない治療法への進歩が望まれている。分子標的薬の一つである血管新生阻害薬、Anti-VEGF抗体やTyrosine kinase inhibitors (TKIs) では抗腫瘍効果を示す一方、口腔副作用として顎骨壊死が報告されている。我々の歯科口腔外科領域においては顎骨壊死は放射線性骨髄炎に並ぶ難治性の骨疾患であり治療に難渋する。これまで破骨細胞機能を抑制するBisphosphonate製剤や抗RANKL抗体という骨修飾薬が顎骨壊死に関連することが分かっているが、Anti-VEGF抗体やTKIsがそれを発症させる機序は十分に解明されていない。そこで、本研究ではin vivoでのVEGFシグナルによる破骨細胞制御を仮定し、破骨細胞特異的VEGFシグナル欠損マウス (LysM-Cre;VEGFR2 e3loxp/ e3loxp) を作成し、表現型を解析すること、またTKIs投与マウスを用いた抜歯モデルを作成と顎骨壊死発症の有無を検索することを研究実施計画とした。初年度の実施内容としては遺伝子改変マウスの導入に際する委員会承認の手続きを行い、導入を目指している。社会的な事情により発注と輸入は遅らせている。TKIs投与マウスについてはBisphosphonate製剤との併用の効果をみるため投与計画を具体化させている。動物実験計画書を提出予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択以降で遺伝子組み換え計画を立案して、委員会承認の手続きを可及的に終え、導入を目指している。動物実験計画書についても現在提出中である。また初年度はアメリカ骨代謝学会に参加し顎骨壊死に関する最新の研究に触れることができ、本研究計画に役に立つ情報収集ができたと考えている。顎骨壊死に関連する顎骨発生を主とした論文発表1件、癌研究に関連する症例発表1件を行った。計画における大幅な遅延や逸脱は見られないと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変マウスの導入に関しては委員会承認の手続きを可及的に終え、導入を目指している。社会的な事情による発注と輸入の遅延が続く場合にては後者の実験を優先的に進めることとする。動物実験計画書の承認が得られ次第、対照群、TKIs投与群、Bisphosphonate製剤投与群、併用群のマウスを各々作成し骨代謝や抜歯後の治癒の変化を検討していく予定である。
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