研究課題/領域番号 |
19K10291
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川崎 五郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (60195071)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔がん / PDL1 / PDL2 / 浸潤 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬の効果に関する研究として、本年度は腫瘍側因子のPD1に対するリガンド発現について研究を行った。舌扁平上皮癌症例98例の病理検体を用いて免疫組織化学的研究を行い、臨床的因子、病理学的因子、浸潤マーカーおよび増殖マーカーとの関係について検討した。さらに、各症例における免疫系の血液データを収集し、免疫組織化学的研究結果との関連性についても検討した。腫瘍側のリガンドとしてはPDL1抗体およびPDL2抗体を用いた。これらのリガンドは多くの舌がん症例の腫瘍細胞に発現がみられた。PDL1とPDL2の発現には相関性が認められなかった。PDL1およびPDL2はいずれも臨床的因子との相関性は認められなかった。病理組織学的因子との相関については、PDL1発現と癌細胞浸潤因子であるYK分類との間に相関性がみられた。さらに、がん細胞浸潤マーカーとしてMMP2およびMMP9について、腫瘍増殖因子としてKi-67について免疫組織化学染色を行った。PDL1発現とPDL2発現のいずれも、Ki67陽性スコアーとの相関は認められなかった。MMP2とMMP9に関しては、PDL1発現およびPDL2発現のどちらとも相関性認められた。 以上の結果から、PDL1とPDL2は舌がん症例において、癌細胞の悪性度、特に細胞浸潤と何らかの関係があることが示唆された。 一方、腫瘍周囲の抗腫瘍CD8陽性T細胞ついて免疫組織化学的検討を行った。その結果、PDL1とPDL2いずれにおいてもCD8陽性細胞との相関は認められなかった。また、末梢血リンパ球数、好中球数、単球数との比較検討を行ったが、いずれにおいてもPDL1発現およびPDL2発現のどちらとも相関性が認められなかった。 以上の結果より、PDL1およびPDL2の発現は、免疫系の影響を受けずに、腫瘍細胞の浸潤動態に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった、臨床検体における腫瘍細胞側の因子について概ね検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
口腔癌由来の培養細胞を用いて、PDL1およびPDL2の発現について検討し、それらをブロックすることによって、増殖や浸潤にどのような影響を与えているかを調べる。さらに、PD1の発現について検討し、PDL1およびPDL2の発現との関連性について検討する。また、リンパ球や単球などとの関連性についてもin vitroで検討を行う。 1年目の研究の追加として、mTOR関連の因子との関連性について免疫組織化学的検討を行い、培養細胞を用いた検討も併せて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とした抗体がやや安く購入できたため、少し余剰金額が発生した。しかしながら、今年度の研究の一部の延長で免疫組織化学研究を行う必要があり、その際に必要な抗体の購入に充てることができ、そのように使用する予定である。
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