研究課題/領域番号 |
19K10291
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川崎 五郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (60195071)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 増殖 / 舌癌 / PD-L1 / PD-L2 / PD-1 / Ki67 |
研究実績の概要 |
免疫組織化学的研究として、扁平上皮癌症例の組織切片を用いてPD-L1、PD-L2およびPD-1の発現を確認した。PD-1発現の認められない症例のうち、PD-L1のみ発現している症例、PD-L2のみ発現している症例、PD-L1およびPD-L2の両方が発現している症例の3群に分類した。PD-1発現がみられないにもかかわらずPD-L1およびPD-L2の発現しているものは、PD-L1とPD-L2に異常がおきている可能性があると考え、各群においてKi67およびPCNAの発現を検討し相関性を確認した。一方、対照群としてはPD-1、PD-L1およびPD-L2のすべてが発現している症例群とした。対照群に比べ、その他の群はKi67の発現が高い傾向を示した。なかでも、PD-L1およびPD-L2の両方が発現している群では、Ki67は有意に高く発現が認められた。PCNAに関しては、有意差は認められなかったものの、対照群に比べてすべての群でその発現が高い傾向がみられた。以上のことから、PD-1に誘導されないPD-L1とPD-L2には何らかの細胞生物学的な異常があり細胞増殖に関係している可能性が示唆された。これらの結果に基づき培養細胞を用いた研究を行った。培養細胞としては、SAS、HSC3、HSC4、OSC19、OSC20およびOSC25を用いた。各々の扁平上皮癌由来培養細胞におけるPD-L1とPD-L2の発現をFACScanを用いて行った。PD-L1とPD-L2の発現には培養細胞の種類によってばらつきがあり、PD-1で誘導することなく各々の発現が認められていた。これらの細胞における増殖能をELISA法を用いて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞での研究がやや遅れている。培養細胞におけるPD-L1およびPD-L2の発現検討を行い各々培養癌細胞の種類によってそれらの発現が異なることが確認できたが、培養操作上の各種の試薬等の影響によるPD-L1およびPD-L2の発現の可能性も考える必要性があった。そのため、血清の濃度の影響や無血清培地での短期培養に関する基礎的研究に時間が費やされ予定の研究がやや遅れた。これらの研究結果からは、培養条件による何らかの影響の可能性は低いと思われ、今後の研究を進めていく上で重要な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
口腔扁平上皮癌由来の培養細胞におけるPD-L1とPD-L2発現の違いと細胞生物学的性質の関連性について調べる。まず、細胞増殖能との関連性について調べる。これらにはいくつかのアッセイが必要と思われる。さらに、PD-L1とPD-L2の抗体を用いて、それらがブロックされた場合に細胞増殖能が影響を受けるか否かを上記と同様の細胞増殖試験を用いて検討する。また、浸潤に関する研究も併せて行う。抗PD-1抗体使用の効果に対する抗がん剤の影響を念頭に、今回の実験系では、PD-L1およびPD-L2の異常発現と各種抗ガン剤感受性という観点からその関連性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
口腔扁平上皮癌由来の培養細胞を用いて研究を行ったが、培養で用いた材料の影響について検討する必要が生じた。しかしながら既に購入していた材料および試薬を使用してその基礎的研究を遂行できたため、残りの研究費は次年度に使用することとした。次年度は、細胞増殖に関するアッセイ、抗ガン薬などを用いた浸潤増殖に関するアッセイを行う予定で、それらの研究には相応の費用がかかると推測できるため、持ち越した予算を使用する予定である。
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