研究課題/領域番号 |
19K10292
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 晃亘 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10305237)
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研究分担者 |
中井 裕美 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80792126)
小林 淳一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80404739)
土橋 恵 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50815264)
宮本 昇 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (80749565)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 口腔がん / がんペプチドワクチン療法 / がん特異抗原 / 免疫逃避機構 / がん幹細胞 / HLA |
研究実績の概要 |
新規口腔癌細胞株を樹立して、免疫不全マウスへの移植で高分化型扁平上皮癌であることを組織学的に確認した。また、癌細胞上にHLA class Iが発現していることを確認した。 口腔扁平上皮癌の手術検体を用いて腫瘍浸潤先端部(IF)および腫瘍中心部(TCe)におけるHLA class Ⅰの発現について免疫組織化学染色により検討を行ったところ、TCeと比較してIFではHLA class Ⅰの発現が有意に高いことが示された。5年全生存率(5-OS)は、IFにおいてHLA class Ⅰ High症例がLowおよびNegative症例より有意に高く(90.3% vs 79.5% vs 66.7%: p=0.03)、TCeにおいては有意差を認めなかった。5年疾患特異的生存率(5-DSS)についても同様で、IFにおいてHLA class Ⅰ High症例がLowおよびNegative症例より有意に高く(94.4% vs 90.9% vs 76.2%: p=0.03)、TCeにおいては有意差を認めなかった。単変量解析で有意差を認めた各臨床病理学的因子について多変量解析を行ったところ、IFにおけるHLA class Ⅰの発現がOSの独立因子となった(ハザード比0.44, 95%信頼区間0.20-0.93, p=0.02)。また、CD8陽性T細胞と癌細胞上のHLA class Ⅰ発現との関係について検討したところ、IFにおいてCD8陽性T細胞とHLA class Ⅰの発現レベルに正の相関を認めた。 以上の結果から、免疫逃避機構に関連する分子の1つであるHLA class Ⅰの腫瘍浸潤先端部における発現低下は、口腔扁平上皮癌の重大な予後不良因子であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
樹立した新規癌細胞株と同一患者から得られた腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の共培養により、癌特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導に成功したが、CTLのクローニングに時間を要している。 一方、口腔扁平上皮癌の腫瘍浸潤先端部におけるHLA class Ⅰ発現が有用な予後因子となり得ることを明らかにした研究成果は、Cancer Sci(オープンアクセス誌)に掲載され閲覧可能である。
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今後の研究の推進方策 |
新規癌細胞株の樹立と患者末梢血単核球(PBMC)あるいはTILから癌特異的なCTLを繰り返し誘導し、CTLクローンを単離する。さらに、培養した癌細胞から癌幹細胞を分離し、HLA-A24に提示されるペプチド配列を解析する予定である。 口腔扁平上皮癌の手術検体を用いて、腫瘍微小環境における各種免疫担当細胞の発現レベルを免疫組織化学染色により検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究計画の一部にやや遅れがみられ、それに伴い試薬類の購入が次年度に持ち越しとなったことから、令和2年度に使用する実験試薬に充当する。
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