研究課題
有効な個別化・複合免疫療法を確立するためには、抗腫瘍免疫応答メカニズムの解明やバイオマーカーの開発が重要である。口腔癌微小環境の癌浸潤先端部(IF)および癌中心部(TCe)における免疫担当細胞の発現について、手術検体を用いて免疫組織化学染色により検討した。その結果、IFの腫瘍実質におけるFoxP3+T細胞の高発現群の全生存率が有意に高かったことから、FoxP3+T細胞は制御性T細胞(Treg)としての抑制機能を持たない集団である可能性が考えられ、CTLA-4+細胞がFoxP3+T細胞の機能を抑制していることが示唆された。また、IFおよびTCeの腫瘍間質における CD45Ro+T細胞の高発現群の全生存率、無再発生存率が有意に高かったことから、メモリーT細胞を中心とする獲得免疫機構が口腔癌の予後予測バイオマーカーとして有用と考えられた。口腔癌手術検体から新規口腔癌細胞株10株を樹立した。それらの患者から末梢血単核球(PBMC)と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を分離し、自家癌特異的細胞傷害性T細胞 (CTL)を誘導した。口腔癌細胞株を用いたin vitroの実験で、シスプラチンによる細胞ストレスがHSF1の活性化とHSP90の誘導を促し、HSP90がPD-L1と直接結合して口腔扁平上皮癌細胞表面のPD-L1発現を亢進させることで免疫逃避に関与していることが明らかとなった。化学療法と免疫療法の複合療法が抗腫瘍効果を増強させ、口腔癌治療に有効である可能性が示唆された。今後さらに効果的な抗癌剤と抗PD-1抗体併用の治療法開発に繋がる知見が得られた。
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Cancer Med
巻: 12 ページ: 4605~4615
10.1002/cam4.5310