研究実績の概要 |
脂肪組織由来幹細胞としてラット脂肪組織から、adipose derived stem cells(ASC)とdedifferentiated fat cells (DFAT)を分離した。また骨髄細胞からはbone marrow stem cells (BMSC)を骨芽細胞誘導の陽性コントロール細胞として分離を行った。それぞれの細胞の細胞増殖能の解析を行うと、ASCとDFATはBMSCに比較して5倍以上の細胞増殖能を示した。次に細胞表面マーカーとして、CD31,CD44,CD45,CD90,CD105の発現について解析を行ったが、有意な発現変化は確認できなかった。骨分化培地(基本培地にデキサメタゾン、アスコルビン酸、βグリセリン酸含有)で骨芽細胞への誘導を行ったところ、BMSCの骨芽細胞への分化に比較して、アルカリフォスファターゼの発現や石灰化度の程度は弱いが、骨芽細胞への分化誘導が可能であった。またASCおよびDFATを血管内皮細胞誘導培地(VEGF,hFGF-B,IGF-1,アスコルビン酸,EGF,GA-1000含有)を用いて培養を行ったところ、細胞はシート状に増殖し、トリプシン-EDTA溶液では細胞分散が困難な、マトリックス構造を構築し、一部の細胞にvon Willebrand Factor(vWF)の発現が確認された。 次に生体内において組織構築を成すためのスキャホールドが必要である。本研究においてはスキャホールドとしてβ‐TCP含有多孔性ゼラチンスポンジを使用することとした。ASCあるいはDFATをスポンジ内に播種し、細胞培養を行ったところ、細胞はスポンジ表面に付着して増殖することを明らかとした。 以上、今年度はASCとDFATのin vitroにおける骨芽細胞および血管内皮細胞への分化能力と、スキャホールド内での細胞培養が可能である事を明らかにした。
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