研究課題/領域番号 |
19K10297
|
研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
櫻井 学 朝日大学, 歯学部, 教授 (50225843)
|
研究分担者 |
岸本 敏幸 朝日大学, 歯学部, 講師 (80733435)
宮脇 卓也 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00219825)
松浦 信幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20408313)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アデノシン受容体 / セボフルラン / アデノシン三リン酸 |
研究実績の概要 |
被験者1名においてセボフルラン単独,アデノシン三リン酸(ATP)製剤単独,セボフルランおよびATP製剤の併用の3種のTrialを,それぞれ2週間以上の期間を開け施行し,催眠・鎮静状態,催眠・鎮静からの回復過程,呼吸・循環・平衡機能への影響を観察・評価した. セボフルラン単独では,セボフルラン終末呼気濃度が0.4%になるように維持した.その結果,脳波スペクトル分析装置により測定されるBIS値に変化が認められ,セボフルラン投与後15分ではBIS値は99から73まで低下し軽度の催眠状態になった.それとともに舌根沈下が認められ,指示行動に反応しないこともあった.セボフルランの投与終了後にはBIS値は緩徐に上昇し,投与終了後15分では覚醒域まで回復し,認識力,精神運動機能,平衡機能も完全に回復した.セボフルラン(0.4%セボフルラン終末呼気濃度)とATP製剤の併用でも,軽度の鎮静・催眠状態が認められ,BIS値は74まで低下したが,今回の被験者ではセボフルラン単独と比較して大きな差が認められなかった.呼吸器系に対しては,セボフルラン単独,セボルルラン・ATP製剤併用ともに軽度の抑制が認められたが,両者で差はみられなかった.循環系に対しては,セボフルラン単独,セボルルラン・ATP製剤併用でも大きな影響はなかった. ATP製剤単独では,投与中に催眠・鎮静効果は得られず,認識力にも影響はなかったが,投与終了後に強い眠気を訴えた.ATP製剤投与に伴う呼吸・循環器への影響は認められなかった.またATP特有の胸部違和感が認められたが,大きな副作用はなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の蔓延,緊急事態宣言発令により,被検者の募集なども含め研究の進行に支障をきたした.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの計画を実行し,(1)セボフルラン単独,(2)ATP製剤単独,(3)セボフルランおよびATP製剤の併用による催眠・鎮静状態,回復過程を観察・評価する.対象は男性健康成人ボランティアとし,同一被験者で上記3回のtrialをランダムに施行する.セボフルランはセボフルランの終末呼気濃度が0.4%になるように50分間マスク換気により投与する.ATP製剤は精密持続点滴装置を用い8分かけて漸増させ100 μg/kg/minとし,50分間投与する.観察時間は,薬物投与後90分とし,各観察項目を5分ごとに記録する.観察項目は,鎮静レベルと覚醒状態(脳波スペクトル分析装置の値から鎮静状態の評価,および指示に対する反応の有無により覚醒か催眠状態にあるかを評価する),回復状態(認識力;覚醒時に正解することを確認した計算問題の正解率により認識力の回復を評価する,精神運動機能;Trieger Dot Test,47個の12mm間隔で直線と曲線状並んだ点を線でつなげ,その成功率と終了までの時間で精神運動機能の回復を評価する,平衡機能;グラビコーダーを用い重心動揺距離・面積を測定し,平衡機能の回復を評価する),循環(心拍数,血圧,心電図),呼吸(呼吸数,1回換気量,分時換気量,終末呼気炭酸ガス濃度,経皮的動脈血酸素飽和度)とする. Covid-19に対しては,感染状況を考慮し研究を行うが,換気・消毒などを中心とした感染予防を厳重に行い,必要最低限の人数でデータを採取する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は対象となる被検者が少なく経費がかからなかったため残金が生じた.2021年度は,研究機材,薬品,被検者(ボランティア)への謝金,データ解析などに,2020年度残金および2021年度助成金を使用する予定である.
|