非致死的な遠隔虚血負荷操作が、中枢神経再生機転に与える影響を検討した。実験はCB17マウスを3グループに分けて行った。FA群:両側大腿動脈を10分間血流遮断した後、5分間の再灌流を行った。MCA群:左側中大脳動脈を5分間血流遮断した後、5分間の再灌流を行った。CA群:左側頸動脈を10分間血流遮断した後、5分間の再灌流を行った。各群とも上記の操作を3サイクル行った。 免疫組織化学染色により神経幹細胞の発現様式を解析した。FA群、CA群では、恒常的再生部位である海馬歯状回において、神経幹細胞のマーカーであるnestin陽性細胞が顆粒層を中心に多く観察された。さらに、GFAP陽性アストロサイトも観察され、その一部はnestin陽性細胞とマージした。MCA群では、大脳皮質梗塞巣領域においてMAP2陽性ニューロンの脱落およびnestin陽性細胞の発現、ペナンブラ領域におけるGFAP陽性アストロサイトの発現が観察された。 実験結果より、遠隔虚血負荷によって海馬歯状回の内在性神経幹細胞の誘導が活性化する可能性が示唆された。また、二重染色の所見から、組織の修復に関与する反応性アストロサイトの存在が示唆され、虚血耐性の獲得に神経幹細胞、アストログリアが神経再生機転に大きく関与することが明らかとなった。
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