研究課題/領域番号 |
19K10301
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
池邉 哲郎 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (20202913)
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研究分担者 |
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 細胞老化 / 顎骨壊死 |
研究実績の概要 |
高齢者の顎骨脆弱化(顎骨壊死や骨萎縮)の原因は、「細胞老化」した顎骨細胞(骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、骨髄細胞)の蓄積にあると仮定して研究を開始した。加齢したマウスからの顎骨細胞の解析、加齢したマウスへゾレドロン酸投与による顎骨壊死発症モデルについての解析、培養細胞、まずは破骨細胞の分化および老化についての解析を行った。その中でも破骨細胞のin vitroでの分化および老化について以下の事が明らかになった。 破骨細胞の前駆細胞からの分化、生存延長および細胞死を誘導することが知られているRANKLに着目し、RANKLとRNKL作用に必須な共分子であるimmunoreceptor tyrosine-based activation motif (ITAM)の破骨細胞老化への関与について解析した。ITAMにはDAP12とFcRγの2種類あるが、RANKL作用時における2種類のITAMの破骨細胞のCa oscillationについての効果を調べた。DAP12またはFcRγのノックアウトマウス(KO)の骨髄細胞を分離し、RANKLを作用させることによって破骨細胞に分化させる際のCa oscillationをFura-2を用いて調べたところ、FcRγKOでは高周波側へシフト、DAP12 KOでは低周波側へシフトした。高周波領域帯では、どちらか一方のITAMがないと減弱し、低周波帯では2種類のITAMが、振幅の調節を担うことが分かった。破骨細胞形成・生存に関与する2種のITAM共受容体のうちFcRγは高周波領域を、DAP12は低周波領域を抑制した。現在、破骨細胞のリモデリング効率を減少させ、破骨細胞の生存を抑制する骨吸収抑制薬ゾレドロン酸のCa oscillationに対する効果、SASP分泌および細胞老化へ関与について検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスから下顎骨を採取し、細胞老化マーカーSA-β-Gal と p16Ink4aの発現を解析したが、免疫染色の条件が定まらず、マウス年齢による差異が明瞭でなかった。そこで、マウス骨髄から骨髄細胞を分離し、破骨細胞へ分化誘導させた上で、破骨細胞の培養日数による細胞老化マーカーSA-β-Gal と p16Ink4aの発現を調べたところ、期待する発現パターン(培養日数に依存して発現が亢進することを予想)が見られたものの、再現性に問題があり実験条件の調整を行っている。しかし、破骨細胞に対するRANKLの作用は顎骨壊死の発症メカニズムにも関わるが、その共受容体ITAMとカルシウム代謝についての研究成果は破骨細胞の細胞老化研究に結びつくものである。 一方、30か月齢マウスの腹腔にゾレドロン酸を投与し、下顎臼歯を抜去する顎骨壊死モデルにおいて、抜歯後1か月後に顎骨壊死が生じることをマイクロCTにて確認できた。しかし、加齢と顎骨壊死の頻度ならびに重症度との比較はできていないためマウスの処理条件を再考する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き加齢マウスの顎骨細胞における細胞老化マーカーの発現と、ゾレドロン酸を投与した際の細胞老化レベルの変化を解析し、高齢者に顎骨壊死が発症する際の顎骨内の破骨細胞と骨芽細胞の細胞老化が発症に関与するデータを蓄積したい。また、前年度の研究によって破骨細胞による骨代謝にはRANKLとITAMが重要であることが分かったため、破骨細胞の細胞老化、加齢マウスの顎骨壊死、およびゾレドロン酸の顎骨細胞への作用、に対するITAM発現とCa oscillationの関係を調べたい。さらに、各種ノックアウトマウスで、ゾレドロン酸による顎骨壊死の頻度と重症度に差があるかもしれないため、解析を行ってRANKLの反応性(Ca oscillationなど)の違いと顎骨壊死との関係性について解析したい。 また、細胞老化した細胞に細胞死を誘導することが知られている分子標的治療薬dasatinibの破骨細胞と骨芽細胞の細胞老化マーカーSA-β-Gal と p16Ink4aの発現に対する効果を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月から3月にかけて、新型コロナウイルスの影響で、東京への研究打合わせや学会出席を見合わせたため予定の旅費を使えませんでした。また、同じ理由で試薬の購入の目途が立たなかったためです。 前年度に予定していた旅費等あまった分を令和2年度の試薬購入に充てたいと思います。
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