研究課題/領域番号 |
19K10302
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
大関 悟 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 口腔腫瘍・口腔ケアセンター 口腔腫瘍統括長 (80117077)
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研究分担者 |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
藤井 慎介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (60452786)
田尻 祐大 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 歯科・口腔外科医師 (30820659)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔がん / TRPチャネル / Hippoシグナル / 扁平上皮がん |
研究実績の概要 |
本研究では、口腔扁平上皮癌細胞において、Transient receptor potential (TRP)チャネルが機械刺激受容体として微小環境に応答することによりシグナル伝達が活性化されることによって腫瘍形成に影響を与えるのか、TRPチャネルシグナル伝達とArl4cシグナルが協調的に相互作用することによって腫瘍形成に影響を与えるのか、について検討することを目的としている。平成31年度、令和元年度は以下の研究結果を得た。 ①口腔扁平上皮癌細胞株において、TRPV4チャネルは非アゴニスト存在下、つまり定常状態でもCaチャネルとして機能している。②siRNAを用いてTRPV4チャネルをノックダウンするとCaMK IIの活性化が抑制され、日数依存的な増殖能が抑制された。③CaMKⅡの活性化を抑制すると、日数依存的な増殖能およびAKTの活性化が抑制された。④AKTの活性化を抑制すると、増殖能が抑制された。⑤TRPV4は細胞外の環境(浮遊状態、2次元培養、3次元培養)を認識して細胞増殖を制御することを見出した。⑥ゼノグラフトモデルにおけるTRPV4発現抑制株移植群では腫瘍形成能が抑制された。 これらの結果から、口腔扁平上皮癌細胞においてTRPV4チャネルが発現しており、定常状態においてもCaチャネルとして機能していること、TRPV4チャネルを介してCaイオンが細胞内に流入することで、CaMKⅡおよびAKTを介して腫瘍形成を制御する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで口腔扁平上皮癌細胞株におけるTRPV4チャネルの発現と腫瘍形成への影響について詳細に解析されていなかった。平成31年度・令和元年度内の私共の研究結果から、TRPV4チャネルが口腔扁平上皮癌細胞株において高く発現しており、in vitroおよびin vivo実験系においてTRPV4の下流シグナルとしてCaMKⅡやAKTを介して腫瘍形成に関与している可能性があることが明らかとなった。またTRPV4が細胞外の環境を感知している知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
①ヒト組織標本におけるTRPV4チャネルの詳細な発現様式、および下流シグナルとしてpAKTの発現の発現様式は不明である。本年度はヒト口腔癌病理標本を用いて、これらの因子の発現について検討する。また、その発現と臨床病理学的な検討(癌の分化度や5年生存率)を行う。 ②研究分担者らは口腔扁平上皮癌において低分子量Gタンパク質Arl4cが新規癌遺伝子として機能することを明らかにしているが、TRPV4シグナルとの関係は不明である。そこで、TRPV4とArl4cを分子標的としてその発現抑を制すると相乗的に抗腫瘍効果を発揮するかについて検討する。
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