研究課題
本研究では、我々の研究グループが独自に樹立したリンパ節腫脹マウスを用いた肺微小転移休眠細胞活性化モデルマウスを用いて、 転移リンパ節(LN)郭清による肺転活性化の機序を血中循環腫瘍細胞および転移先臓器での前転移ニッチ形成部位の遺伝子発現の変動から明らかにし、それぞれの変動遺伝子群の上流遺伝子発現の制御を可能にする手法を見出し、肺転移予防法の開発を目指す。本研究においては、肺微小転移休眠細胞活性化モデルマウスの血漿や転移病巣における遺伝子やタンパクの発現の変動を的確に捕捉できるかどうかが重要なポイントとなる。従って、用いる疾患モデルに他の疾患が発症すれば取得した遺伝子の解析が困難となる。現在、研究グループは、LN腫脹を自然発症し、肺微小転移休眠細胞活性化モデルマウスとして利用可能なリコンビナント近交系マウスを9系統維持している。2019年度においては、これらのマウスの基礎疾患や腫瘍細胞の生着やLN転移や肺転移の状態を確認し、MXH10/Mo/lprマウスが最も適していることが明らかとなった。MXH10/Mo/lprマウス以外では、生体発光画像解析装置を用いて生体内の腫瘍細胞の動態を解析するために使用したルシフェラーゼ発現腫瘍細胞が、移植免疫学的には組織適合抗原が一致しているにもかかわらず、腫瘍細胞の生着や転移能に問題があったが、MXH10/Mo/lprマウスにおいては、ルシフェラーゼ発現腫瘍細胞の生着や転移能に問題は無かった。また、2019年度には、転移LN切除により肺転移の活性化を誘導したマウスからの血液標本採取を行ったが、2020年度には、採取した標本を用いて血漿質量分析(LC-MS/MS)を行い、肺微小転移の活性化に関与する候補分子を探索する。
2: おおむね順調に進展している
現在、研究グループは、LN腫脹を自然発症し、肺微小転移休眠細胞活性化モデルマウスとして利用可能なリコンビナント近交系マウスを9系統維持しているが、リンパ節腫脹以外の基礎疾患がみられず、リンパ節腫脹の再現性に優れ、かつ、腫瘍のリンパ節および肺転移活性化の再現性に優れる疾患モデルとしてMXH10/Mo/lprマウスを見出せたことは大きな収穫であった。2019年度には、転移LN切除による肺転移を誘導したマウスから血液標本採取を行うことができたことから、2020年度には、採取した標本を用いて血漿質量分析(LC-MS/MS)を行い、肺微小転移の活性化に関与する候補分子を探索することが可能となった。
2020年度には、採取した標本を用いて血漿質量分析(LC-MS/MS)を行い、肺微小転移の活性化に関与する候補分子を探索する。この解析結果で、肺微小転移の活性化に関与する候補遺伝子が見いだせれば、転移リンパ節や遠隔転移の標的臓器である肺におけるタンパクや遺伝子発現について分子病理学的に解析し、肺微小転移の活性化を抑制する新たな分子標的療法の開発の可能性を検討する。
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である.令和2年度請求額とあわせ,令和2年度の研究遂行に使用する予定である.
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