研究課題/領域番号 |
19K10309
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
水田 邦子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40432679)
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研究分担者 |
飛梅 圭 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40350037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TMEM16E / 抗体 / 遺伝子改変マウス / ANO5 |
研究実績の概要 |
TMEM16E遺伝子は歯根膜細胞において高い発現を示すというこれまでの報告から,歯根膜あるいはセメント芽細胞の分化過程において重要な機能を果たしている可能性が考えられる。本研究では,TMEM16Eを切り口として顎骨に生じる硬組織形成線維性病変発症・病態のメカニズムの解明を目指す。 顎骨骨幹異形成症(GDD)患者に認められる骨性異形成症は,いわゆる線維骨性病変に属するもので,非腫瘍性病変と定義され,歯の萌出領域 の顎骨に発生する原因不明の病変で,非腫瘍性の異形成症と考えられており,従来はセメント質腫(cementoma)に含まれていた。GDD患者に必発する顎骨の骨性異形成症は,上下顎骨の歯根付近に発症し,歯根膜あるいはセメント芽細胞の関与が報告されている。申請者ら研究グループは,変異TMEM16E遺伝子から産生されたTMEM16E蛋白の蓄積により,細胞増殖が促進される一方,細胞分化は抑制され,最終的にGDDの顎骨病変を引き起こすことを予想している。 TMEM16E遺伝子に認められるGDD型ミスセンス変異がTMEM16E異常タンパクを産生,蓄積することで骨系統疾患(GDD)を発症させるという仮説のもとに,本年度の研究計画では,疾患モデルマウスとしてTMEM16Eノックインマウスの繁殖・系統維持および表現型解析を進めている。動物モデルを解析するにあたり,これまで,TMEM16Eタンパクを特異的に認識する抗体がなかったことから新たにモノクローナル抗体を作製し,その特異性の評価の検証を進め,現在までのところ筋組織においては既製抗体と比較しウエスタンブロット,免疫染色においても特異性の高いシグナルを検出できることが確認された。この抗体のさらなる条件検討を進め,動物モデルの表現型解析に応用したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,骨形成や歯の発生・分化過程におけるTMEM16Eの役割とTMEM16Eの変異がGDD病態(顎骨に生じる硬組織形成線維性病変)を引き起こすメカニズムを明らかすることを目的に,これまでに作製した顎骨骨幹異形成症罹患者のTMEM16E遺伝子でみられるアミノ酸変異を再現したノックインマウス(顎骨骨幹異形成症モデルマウス)の繁殖・系統維持と表現型解析を行ってきた。 しかしながら、TMEM16Eの内在性タンパクの顕著な不安定性と新規作製した抗体の条件検索に時間がかかっており、研究の進行に遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、疾患モデル動物(ノックインマウス)の繁殖・系統維持とその解析を行う。顎骨骨幹異形成症GDDのモデルとなるGDD変異ノックインマウスのホモ型変異マウスを用いることで疾患モデルの確立に努めたい。 また、疾患発症の分子機構についてin vivo解析で得られた成果をin vitroに還元しながら生化学的解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 抗体の特異性の解析に時間を要したことから、予定していたマウス表現型解析が滞り、若干の次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度使用額は、疾患モデルマウスの繁殖・系統維持とその解析に使用する。
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