研究課題
インテグリンαv発現が,p62を介した選択的オートファジーにより制御されているかを検討するため,インテグリンαvとp62との結合をMammalian two-hybrid法 にて解析することを計画した.そこでGAL4 DNA-Binding Domain Cloning VectorであるpMにp62遺伝子を組み込んだpM/p62,Activation Domain Cloning VectorであるpVP16にインテグリンαv遺伝子を組み込んだpVP16/αv作製の作成を完了し,扁平上皮癌細胞への遺伝子導入を行い,インテグリンαvとp62との結合を示唆する所見を得ている.また,共免疫沈降法による解析により,インテグリンαvが免疫沈降されたサンプル中にp62が存在していることを確認したことから,インテグリンαvとp62が扁平上皮癌細胞内で複合体を形成していると考えている.さらにオートファジー阻害剤であるクロロキン存在下で培養した扁平上皮癌細胞におけるインテグリンαv蛋白とオートファゴソームマーカー蛋白であるLC3の局在を,蛍光二重免疫染色で検索したところ,インテグリンαvとLC3が細胞内でco-localizationしていることが示されたことから,インテグリンαvはオートファゴソームマーカー内に存在し,リソソームによって分解される可能性が示唆された.さらに細胞接着分子のひとつであるclaudin-1がリソソームによって分解されることを確認している.なお,claudin-1は扁平上皮癌細胞の運動能と蛋白分解活性を調整していることも確認している.
2: おおむね順調に進展している
インテグリンαVが,オートファゴソーム内に取り込まれ,リソソームによって分解されている所見を確認している.Mammalian two-hybrid 法では,選択的オートファジーのアダプター分子であるp62とインテグリンαVが結合していることを示唆する所見を得ている.またp62とインテグリンαVが細胞内で複合体を形成することを共免疫沈降法でも確認している. さらに,口腔扁平上皮癌細胞の運動能と蛋白分解活性を調節している細胞接着分子のひとつであるclaudin-1が,リソソームによって分解されることを確認している.
Mammalian two-hybrid 法のためのGAL4 DNA-Binding Domain Cloning VectorであるpMにp62遺伝子を組み込んだpM/p62,Activation Domain Cloning VectorであるpVP16にインテグリンαv遺伝子を組み込んだpVP16/αvを作製している.今後,p62やインテグリンαvのdeletion mutantを作製し,Mammalian two-hybrid 法にてp62とインテグリンαVとの結合部位を詳細に検索する予定である.またmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬のラパマイシンによるオートファジー誘導が,扁平上皮癌細胞の接着分子のインテグリンαVやclaudin-1発現に与える影響を解析するとともに,扁平上皮癌細胞の運動能や蛋白分解活性に与える影響について検討する予定である.
2020年度,コロナ感染症等で研究用の物品や試薬の発注が少し遅れたため,予定していた購入額には届かなかった.しかし,次年度は,2020年度購入予定であった物品等を発注する予定である.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)
広島大学歯学雑誌
巻: 52 ページ: 7-13