研究課題/領域番号 |
19K10311
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
青田 桂子 徳島大学, 病院, 准教授 (70437391)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / ケモカイン / JAK/STATシグナル |
研究実績の概要 |
免疫学的指定難病であるシェーグレン症候群(SS)唾液腺では、導管細胞からのケモカインCXCL10過剰産生とそのレセプターであるCXCR3+炎症性細胞が集簇し、病態を形成することが明らかになっている。研究代表者は先行研究で、CXCL10は主にIFN-γ刺激によりJAK/STATシグナルを介して導管細胞から産生されることを報告した。本研究では、関節リウマチ薬であるJAK1/2 選択的阻害薬バリシチニブを用い、JAK/STATシグナル制御が唾液腺の炎症病態形成に及ぼす影響を解明し、SS新規治療薬としてのJAK阻害薬の可能性について検討した。 【材料・方法】SS患者および健常者より採取した口唇腺を用いてJAK1、JAK2、リン酸化JAK1、リン酸化JAK2の発現を免疫組織化学染色法にて検索した。正常ヒト唾液腺導管細胞株を用いて、バリシチニブがIFN-γ誘導性CXCL10発現に及ぼす影響をRT-qPCR、ELISAおよびWestern Blot法にて解析した。さらにバリシチニブがIFN-γ刺激導管細胞株へのJurkat T細胞の走化性に及ぼす影響をmigration assayにて検索した。 【結果】SS患者口唇腺においてJAK1、リン酸化JAK1、リン酸化JAK2は導管に強く発現していた。また、JAK2およびリン酸化JAK2は導管周囲の炎症性免疫細胞に強く発現していた。バリシチニブは導管細胞株においてIFN-γによるSTAT1とSTAT3のリン酸化を抑制し、CXCL10 mRNAおよび蛋白質発現を有意に低下させた。さらにバリシチニブはT細胞の導管細胞への走化性を有意に抑制した。 【結論】バリシチニブは唾液腺導管細胞においてIFN-γ誘導性CXCL10発現を抑制し、炎症性免疫細胞のリクルートを抑制することが明らかとなった。バリシチニブのSS新規治療薬としての可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAK1/JAK2阻害薬であるバリシチニブは唾液腺導管細胞においてIFN-γ誘導性CXCL10発現を抑制し、炎症性免疫細胞のリクルートを抑制することを明らかにし、バリシチニブのSS新規治療薬としての可能性を証明したため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
バリシチニブがSS治療薬として有効と考えられたため、今後は臨床応用に向けた特定臨床研究を予定する。具体的には、本学臨床研究倫理審査委員会の承認を得て、当科受診中の SS 患者50例を対象とする。投与1か月毎に安静時唾液分泌量(吐唾法)と刺激時唾液分泌量(ガムテストもしくはサクソンテスト)を測定し、血液検査にて有害事象の有無を確認する。投与6か月後に口唇腺生検を実施し、病理組織学的検討および免疫組織学的検討を行う。また、同時に血清と唾液を用いて網羅的蛋白質発現解析を実施し、サイトカイン、ケモカインの発現量を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で学会がオンラインとなり旅費が不要となったため次年度使用額が生じた。 次年度は対面学会が予定されており、学会発表のための旅費、準備費等に使用する予定である。
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