本研究の解析対象は口腔扁平上皮癌の未治療新鮮症例のうち腫瘍の大きさが T2 以下で、造影 CT、造影 MRI、PET-CT、超音波検査等にて明らかなリンパ節転移を認めない cN0 症例としている。解析対象組織は、生検もしくは原発切除組織および術前血清とし、多施設共同研究を予定している。本年度は、予定検体数より下回る検体集積実績であるが、各サンプルからの遺伝子発現プロファイルの集積も順調に進んでいる。プレサンプルによるアルゴリズム構築においては、まず、アレイによるリンパ節転移予測マーカーの候補として、リンパ節転移と関連して 2 倍以上の有意な発現変動を示す遺伝子を 329種類同定した。その中にはFN1,LAMC2,TGFBI の発現亢進や KRT13,IVL,CLDN4 の発現低下などが含まれていた。前向き検討として、対象を舌癌症例に絞り検討を行った。T1/2 舌扁平上皮癌一次症例 40 例 で、うち頸部リンパ節転移を認めた症例が 18 例であった、生検あるいは手術により切除された原発腫瘍より組織を一部採取し,total RNAを抽出した。つづいて、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、GeneSpring GX を用いてリンパ節転移と関連して 2 倍以上の有意な発現変動を示す遺伝子群を設定した。次に、これら遺伝子群とサポートベクターマシンによる機械学習にてリンパ節転移予測モデルを構築し、新たに舌扁平上皮癌 10 症例を用いてその精度を検証した。その結果、感度 60% (3/5 例)、特異度 100% (5/5 例)、正診率 80% (8/10 例) であった。
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