研究課題/領域番号 |
19K10314
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加美 由紀子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (60552023)
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研究分担者 |
筑井 徹 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10295090)
栂尾 理 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10452749)
大賀 正浩 九州大学, 大学病院, 診療放射線技師 (60380474)
吉浦 一紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20210643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MRI / compressed sensing / head and neck |
研究実績の概要 |
前年度までに、Compressed Sensing(CS)を使用したMRIの高速撮像により得られた頭頚部腫瘍の描出が十分臨床に使用できることが示されたことから、当該年度では、CSを使用して取得した3D画像データから再構成した2D画像が、従来のシーケンスで取得された2D画像やCTで取得した画像と比較して十分な信頼性を有するか否かを検討した(日本歯科放射線学会 第61回学術大会、第17回定例総会、2021年): 対象は下顎悪性腫瘍患者18名。MRの撮像はCompressed SENSE併用3D-T1TFE法を用いた。使用画像は、元画像と冠状断および歯列弓の水平・垂直の再構成画像。顎骨浸潤は2名の歯科放射線科医が浸潤程度(BI-1, BI-2, BI-3 BI: Bone Invasion)を評価した。さらに軟組織浸潤(歯肉口唇(頬)溝、顎舌骨筋、咀嚼筋隙)の有無を評価した。所見の一致度はカッパ係数で評価した。病理が得られた12例については口腔病理医が浸潤程度を評価し画像と対比した。 その結果、顎骨浸潤程度についてMRおよびCTともに評価者間の一致度は高かった(κ=0.887、0.762)。病理との比較では各評価者でMRが100%、92%、CTが92%、83%で一致した。MRで病理と不一致の1例は画像で過大評価であり、CTで不一致の3例はいずれも過小評価であった。軟組織浸潤についてMRの歯肉口唇(頬)溝の評価者間の一致度は低かったが(κ=0.333)、顎舌骨筋、咀嚼筋隙ではそれぞれκ=0.665、1.0と高い一致度を示した。CT画像ではいずれも低い一致度であった(κ=0.15、0.273、0.248)。 その後、さらに検証症例数を増やし、CS併用により従来の3分の1以下の撮像時間で取得した下顎悪性腫瘍の描出は、CTよりも評価者間での一致度が高く、病理所見との一致度も高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、頭頚部領域において高速撮像したCS画像が従来の画像と比較して十分な画質を有するか否かを検討した。その結果、CS-3D-T1TFE 画像は、MS-SE 画像と同等あるいは高いSNR を保ち、病変の検出やイメージクオリティに関して遜色ない画質であることが確認され、この結果を論文化して国際雑誌に投稿し、受理された(Acta Radiologica Open 2020, https://doi.org/10.1177/2058460120956644)。 さらに、CSを使用して取得した3Dデータから再構成した2D画像が、従来のシーケンスで取得された2D画像やCTで取得した画像と比較して十分な信頼性を有するか否かを検討し、得られた症例数において、良好な結果が得られたことを報告した(日本歯科放射線学会 第61回学術大会、第17回定例総会、2021年)。その後、症例数を増やして検証したところ、同様に良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
CSを使用して取得した3Dデータから再構成した2D画像の臨床的有用性を国際学会で発表し(the 13th Asian Cngress of Oral and Maxillo-Facial Radiology, 2022年6月)、国際雑誌に投稿する。 その後、DCE-MRIで病変内への空間的な濃染パターンを観察するとともに、造影剤到達時間と到達直後の信号強度変化を計測する。また、理論式を用いて、信号強度を造影剤濃度に変換し、到達直後の造影剤濃度変化を算出する。最終的に、得られたパラメーターと病理診断の関連を検討し、総合的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナにより、学会が中止や延期、あるいはオンラインのみとなったため、旅費が発生しなかった。また、ボランティア撮像は行わなかった。 今後、学会の現地開催が再開されれば、旅費を使用して学会に参加する予定である。
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