研究課題/領域番号 |
19K10317
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片山 郁夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (80295089)
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研究分担者 |
佛坂 由可 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (10244089)
佐々木 美穂 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (10437874)
田代 茂樹 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20300882)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | cPLA2 / 電離放射線 / 細胞生存シグナル / 細胞死シグナル |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞に放射線を照射した際に起こる「細胞死シグナル」および「細胞生存シグナル」へのcPLA2の関与を検討した。この実験にはcPLA2WTマウスおよびcPLA2KOマウスの肺から分離したcPLA2(+/+)およびcPLA2(-/-)の線維芽細胞を使用した。本研究では以下の結果が得られた。 (1)cPLA2(+/+)およびcPLA2(-/-)の細胞に放射線を照射した際の細胞の生死を観察したところ、cPLA2(+/+)では細胞死がほとんど起こらなかったが、cPLA2(-/-)では約70-80%に細胞死が起こった。このことから、cPLA2は放射線を照射した際の「細胞死シグナル」に抑制的に機能すると推察された。さらに、DNAの二本鎖切断に伴う高次構造の変化を感知し,その下流にある複数の遺伝子を制御しているATMのリン酸化(=活性化)について検討したところ、cPLA2(-/-)ではcPLA2(+/+)と比較してATMのリン酸化が多く起こっていた。このことから、cPLA2の「細胞死シグナル」への関与が示唆された。 (2)cPLA2は放射線によってリン酸化(=活性化)され核周辺に移行することが観察された。このことから、cPLA2は放射線によって活性化され、核周辺で機能することがわかった。 (3)細胞に放射線を照射した際の「細胞生存シグナル」の起点となるEGFRの活性化を検討したところ、EGFRは放射線によって活性化されること、cPLA2(-/-)の細胞はcPLA2(+/+)の細胞と比較して、早期にEGFRの活性化が起こることがわかった。このことは、放射線による「細胞生存シグナル」に対してcPLA2は抑制的に関与していることを示唆している。 以上のことから、cPLA2は核周辺で機能し、「細胞死シグナル」および「細胞生存シグナル」の両方に対して抑制的に機能していることが示唆された。
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